2015 Fiscal Year Research-status Report
対人援助職者・訓練生のセルフケア力を育み職業不適応を予防する心理教育に関する研究
Project/Area Number |
15K04126
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
安藤 美華代 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60436673)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 対人援助職者 / セルフケア / 職業不適応 / 予防 / 心理教育 / 抑うつ / 不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,社会の中で自分らしく生きる基礎力を育む心理教育“サクセスフル・セルフ”(安藤, 2007, 2012ab)が,対人援助職者や訓練生の職業不適応を予防し心の健康を保つためのセルフケア力を向上させる支援になるための基礎資料を得ることを目的に,質問紙調査を行った。医療従事者109人,学校教員191人の回答を分析した結果,いずれの職種においても,他者との関わりを大切にしていることが伺えた。困難と感じる状況は,児童生徒あるいは患者,その家族,同僚,自分自身,職場環境など多領域にわたった。そのような困難な状況を乗り越える手立てとして,深刻な状況を抱えた際には他者へ相談するといった援助要請行動をとる場合があることが示された。深刻な憂うつ感や不安を抱えていたり,あまり健康だと感じていない人が,1/4程度見られた。以上より,多様な対人関係に対処することを踏まえた心の健康を保つためのセルフケア力を向上させる支援の必要性が示唆された。
心理訓練生を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”については,これまでの試行を踏まえて,社会の中で自分らしく生きる基礎力を身につける心のトレーニングをねらいとして内容・実施方法を洗練させ,全13回のセッションを行い,プロセス評価を行った。その結果,理解度,難易度は,適切であったと考えられた。自分自身と向き合う時間,グループでの話し合いに意義を感じている語りが多く見られたことから,実施方法の充実やシナリオの内容や教材などさらなる工夫が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,平成16年度から実施している社会の中で自分らしく生きる基礎力を育む心理教育“サクセスフル・セルフ”の実践者である対人援助に携わる学校教職員や医療従事者ならびにその訓練生へ対象を広げ,セルフケアとしても可能な方法や内容へ発展させる実証的・実践的研究を行うことである。研究目的に沿って計画した平成27年度の研究内容は,関係者のご協力により,おおむね順調に進展した。平成27年度に得られた結果は,平成28年度の研究計画につながるものである。 対人援助職者版ワークブック作成の基礎資料を得るために平成27年度には,対人援助に携わる人が,対人援助活動において,どのような困難な状況を経験され,どのように乗り越えているのか,そのような経験がその人自身の心の健康にどのように影響しているのかについて理解することを目的とした質問紙調査を行った。その結果,セルフケア,他者への援助要請,環境調整といったことの重要性が示唆された。対人援助職者の具体的な支援につながるワークブック作成に向けて,さらに詳細な質的量的検討を行う予定である。 平成26年度に試行した心理訓練生を対象とした心理教育“サクセスフル・セルフ”の参加者のワークシートに示された記述や語りを参考に,内容・実施方法を洗練させ,対人援助の基礎力を身につけ,メンタルヘルスを育むことをねらいとした実践を行った。その結果,理解度,難易度,セッション数は適切であったと考えられた。シナリオの内容や教材などさらなる工夫が見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に行った質問紙調査の結果をまとめ,学術雑誌,学術学会発表などで成果を公表していく。 結果については,心理教育“サクセスフル・セルフ” 対人援助職者版に反映させる。そして,協力の得られた学校教職員や医療従事者へ実践を行い,プロセス評価を行う。 心理教育“サクセスフル・セルフ” 心理訓練生版については,平成27年度の課題を踏まえて改訂を行い,実践を行い,プロセス評価を行う。 また,平成24年度から年1回実施している,“サクセスフル・セルフ”研究会を継続し,教育,医療,産業領域でこの心理教育に取り組んでいる実践者達が発表したり交流したりする場を設ける。
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Causes of Carryover |
平成27年度の文献購読,質問紙調査,実践による検討から,現在行っている心理教育“サクセスフル・セルフ”に,新たにセルフケアのための支援方法を加える必要性が,浮き彫りになってきている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
そのため,セルフケアにつながる方法を見いだすために,国内外のワークショップ,研修会,学術学会に参加することを計画している。
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