2016 Fiscal Year Research-status Report
動作センサーを実装した積み木による幼児の内在的問題、外在的問題のアセスメント
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15K04139
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
足立 智昭 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (30184188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50292222)
高嶋 和毅 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60533461)
北村 喜文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80294023)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 積み木 / 幼児 / CBCL / 唾液アミラーゼ / ストレス / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、内在的(不安・抑うつなど)、外在的問題(攻撃的行動など)を有する幼児の積み木遊びの特徴を、動作センサーを実装した積み木を用いて定量的に分析することを目的とした。 対象児は、東日本大震災の被害が大きかった沿岸部在住の幼児49名、および被害が小さかった内陸部在住の幼児38名であった。実験装置は、動作センサーを実装した積み木12個、および唾液アミラーゼモニターであった。幼児の内在的、外在的問題は、CBCL(教師用)によって査定した。対象児は、約20分の積み木遊びの前後に、唾液アミラーゼ(salivary alpha-amylase activity 、以下sAMYと略す) の値を測定した。 まず、積み木遊びが、対象児のsAMYに与える影響について分析した。従属変数をsAMY、独立変数を沿岸部・内陸部の2群(被験者間要因)、および積み木遊びの前・後(被験者内要因)として分散分析をしたところ、被験者間要因については有意に近い値、交互作用については有意な値が得られた(積み木遊びの後、沿岸部の対象児ではsAMYの平均値が上昇したのに対して、内陸部の対象児では下降した)。次に、CBCLの8つの下位尺度得点(ひきこもり尺度、身体的訴え尺度、不安・抑うつ尺度、社会性の問題尺度、思考の問題尺度、注意の問題尺度、非行的行動尺度、その他の問題)、内在尺度得点、外在尺度得点、総合得点の平均値に、被験者間で有意な差異が見られないかt検定を行ったところ、思考の問題尺度、注意の問題尺度、その他の問題尺度で、それぞれ有意差が得られた(いずれの尺度得点とも、その平均値が沿岸部の対象児で高かった)。 これらの結果は、沿岸部の対象児において、積み木遊びがストレスを軽減させる効果を持たない可能性があること、またその背景に、彼らの思考、注意の問題など保育上対応が難しい行動があることを示唆するものと解釈された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、内在的問題(不安・抑うつなど)、外在的問題(攻撃的行動など)を有する幼児の積み木遊びの特徴を、動作センサーを実装した積み木を用いて定量的に分析することにある。そのために、内在的・外在的問題行動が多いと仮定された東日本大震災の被災地(沿岸部)の幼児、およびそれらの問題行動が少ないと仮定された内陸部の幼児を対象にデータを得た。積み木遊びの動作解析は、平成29年度の課題となったものの、予定より多くの対象児のデータを得たことから、沿岸部と内陸部のそれぞれの幼児の遊びの特徴や行動特徴を明確にすることができた。これらの結果は、被災地の子どもたちの発達の支援を計画する上で極めて貴重な知見であり、その意味において、本研究はおおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度前半、積み木に実装された動作センサーの解析を進め、対象児の内在的問題、外在的問題に関連する指標を明らかにする。例えば、積み木を動かした時間や回数、積み木を立てた時間や回数、積み木を揺らした時間や回数などが、その指標となり得るが、すでにその解析のためのプログラムは完成している。 これらの解析を通して、動作センサーによって得られる指標から、幼児の内在的問題、外在的問題を予測するシステムを構築する。また、次年度後半、これらのシステムを実際の保育場面で使用し、そのシステムの効果を検証する。 東日本大震災の被災地には、幼児のPTSDなどの対応の難しい問題をアセスメントすることのできる専門家が少ないことから、このようなシステムが構築されるならば、より早く問題行動を有する幼児の対応が可能となることが期待される。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下の3つによる。(1)保育現場でデータを得る際の実験補助としての謝金、および動作センサー解析のための謝金を使用しなかった。前者は、現場の保育士が通常業務の範囲の中で補助をしてくれたために謝金を支払わなかったこと、後者は動作センサーの解析は次年度の課題となったたことによる。(2)英語論文の校閲費用などを使用しなかったことにより、その他の費目の支出が少なかった。(3)動作センサーの解析のための物品費の購入が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度進める積み木の動作センサーの解析において、謝金を使用する予定である。データ量は膨大となるため、残額となっている謝金の多くを使用する。また、次年度ヨーロッパ心理学会で発表する研究内容を英語論文とすることから、その校閲費用に使用する予定である。さらに、分担研究者が、動作センサー解析のための物品(ハードディスク等)を購入する予定である。
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