2015 Fiscal Year Research-status Report
コンドーム使用時の羞恥感情の適応的機能とその制御によるコンドーム使用促進
Project/Area Number |
15K04145
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (60352093)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 羞恥感情 / 社会的機能 / 性感染症予防 / HIV / コンドーム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には先行研究の展望ならびに【研究1:コンドーム使用時の羞恥感情の適応的機能に関する検討】を行った。コンドーム使用時には羞恥感情が強く生起し,それがコンドーム使用を強く阻害することが指摘されてきた(e.g., 樋口・中村, 2010, 社会心理学研究; Moore, et al., 2006, Psychology, Health & Medicine)。したがってその羞恥感情の抑制が適切なコンドーム使用にとっては重要なことである。しかしながらそれは簡単ではない。なぜなら羞恥感情を感じることには何らかのメリットがあると考えられるからである。 たとえばFeinberg, et al. (2012, JPSP) は,羞恥の表出が表出者に対する向社会的評価を高め,他者からの信頼獲得につながることを示した。またKeltner (1995) は羞恥に伴う赤面には他者からの制裁に対する緩和(appeasement)機能があることを示した。これらの研究結果は,羞恥の持つポジティブで適応的な社会的機能,すなわちメリットを明らかにしたものであると言える。 そこで本研究課題では,羞恥感情による適応的社会的機能を明らかにし,それを制御した上でのコンドーム使用の促進を目指している。 今年度はコンドーム使用時の羞恥に伴う社会的機能を明らかにすることを目的とし,まず文献研究を試みた。上述もその成果の一部である。しかし,コンドームと羞恥感情に関する研究はきわめて少なく,直接的にコンドーム使用時の羞恥感情の社会的機能を扱った検討はほとんど存在しない。そのため,広く健康行動とそのメリットに関する先行研究の展望を行った。こうした文献的検討を元に,コンドーム使用時の羞恥表出の機能を明らかにする研究1の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた文献研究は順調に進行している。一方で研究1の実施については若干の遅れがある。しかしその遅れは調査実施にかかる事務的手続き(調査委託業者の選定など)にかかるものであり,内容的に問題はない。既に研究実施の準備は完全に整っており,学内の倫理審査も通過している。平成28年度早々には実施・完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降も,基本的に平成27年度と同様に研究を推進する。直接的・間接的に関連する文献の注意深い精査を行い,それを元にデータ収集の計画を立案する。その上で学内の研究倫理審査委員会にはかり,許可が出た段階でデータ収集を行う。 また今年度は特に実験的な研究を予定している。その際の確実な実験参加者確保のために,現在所属研究室において推進しつつある研究参加者の登録システムの利用を前提とし,確実な研究遂行を期する。
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Causes of Carryover |
当初予定においては,平成27年度において研究1を完了させる予定であった。しかしながら調査委託業者の選定などにかかる事務的な手続きに時間を要したため,年度内での完了にはいたらなかった。そのために平成28年度当初に実行することとし,その分の使用額を繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【研究1:コンドーム使用時の羞恥感情の適応的機能に関する検討】の調査委託費として使用する。そこでは,「コンドームを恥ずかしそうに(あるいは堂々と)使う男性(あるいは女性)」に対して(1)どのように評価できるのか(例:誠実だと思う)に関する自由記述と,さらに(2)それぞれの評価の価値の評価(ネガティブ-ポジティブの7段階評価)を成人男女各50名に尋ねることとしている。なお調査の準備は平成27年度中に既にすべて完了しており,学内の研究倫理審査委員会での審査も通過済みである。
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