2017 Fiscal Year Research-status Report
対人援助職者としての看護師のストレス制御特徴とそれに適合する対処技法の開発
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15K04161
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 安子 京都文教大学, 臨床心理学部, 教授 (60388212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 優年 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (00144098)
山本 初実 独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター(臨床研究部), その他部局等, 研究員(移行) (90416199) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / レジリエンス / 対人援助職者 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
対人援助職者としての看護職者と一般企業就労者間で、ストレス認知の仕方、ストレス対処力(「レジリエンス状態と定義」)およびストレス反応について統計的に比較検討を行った。その結果、看護職の方が、有意にストレス刺激に注目する傾向が高かった。次にストレス対処力のうち、生産的なストレス対処行動につながると思われる項目では、看護職の方が情動焦点対処得点が高く、一般企業就労者の方が、充足的達成動機、運動の有能感、問題焦点対処、自尊心および実存感が高かった。しかし、そして過剰適応を抑制する行動につながると思われる脆弱性は、看護職の方が高かった。そして、ストレス反応は、看護職者の方が、ネガティブ気分が高かった。すなわち、看護職者は一般企業就労者と比較して、ストレス刺激に注目する程度が高く、生産的なストレス対処行動の力が低く、高いストレスを自覚していることが示唆された。 そして、2つの職種における、ストレスの自己統制機序の違いであるが、次のようなことがいえると考えられる。看護職者ではストレス刺激への認知の仕方がストレス反応を予測できるが、一般企業就労者ではそのような予測はできない。そして、看護職者ではストレス対処力の中でも、心理的脆弱性、身体的脆弱性、達成動機がストレス反応を予測できるが、特に心理的脆弱性の予測ウエイトが大きい。他方一般企業就労者では、心理的脆弱性と身体的脆弱性がストレス反応を予測できるが、心理的脆弱性の予測ウエイトが大きい。 以上のことから看護職者は、一般企業就労者に比べてストレス刺激に敏感で、高いストレスを自覚しているにも関わらず、心身ともに敏感で生産的なストレス対処行動がとりにくい状態であると考えられる。こうした状態にある看護職者には、一般企業就労者とは異なる就労支援が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記までの分析は終了した。また、調査協力をいただいたいくつかの一般企業から、個人結果を本人宛にのみ、フィードバックしてほしい旨の要請があった。これに対応するための個人結果判定作業が本研究に追加されたが、これを担当していた研究協力者の事情により、研究ペースを落とす必要が生じた。そのため、研究期間を1年間延長する申請をし、許可をいただいている。なお当該研究協力者は、作業に復帰できる状態になったため、研究全体の進捗状況は、概ね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの結果を踏まえると、対人援助職者への就労支援には、2つの課題があると思われる。1つ目は心理的健康支援、2つ目は臨床支援である。心理的健康支援にあっては、次のことが考えられる。調査の結果を踏まえると、競争的達成動機、すなわち他者に勝っていたい気持ちが、ストレス反応を予測する看護職者には、初めから集団でのストレスマネジメント研修会を実施するよりも、第1段階で個人アプローチによって自分のストレス状態とその対処のあり方に気づいてもらい、第2段階で、それを踏まえたストレス対処方略を立てる必要がある。臨床支援にあっては、メンタルヘルス不全と思われる方々が、どのようなストレス対処の仕方をしているのかを類型化して、それに見合った支援パッケージを用意することが考えられる。 従って、まず心理的健康支援のための支援モデルを構築することと、妥当な臨床支援パッケージを作るための個人結果の妥当性を検討することが必要である。
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Causes of Carryover |
補助事業2年目に「一般企業就労者」を対象に複数の企業で調査を実施した。その際に、「調査の個人結果を本人宛に開示する」ことを条件とした企業がいくつかあったため個人結果の解釈作業が加わった。この作業を依頼している研究協力者に、産休と育児休業という事情が加わったため、研究遂行速度を落としている。研究の質と調査先との信頼関係を担保するため、1年間の補助事業期間延長を申請し、許可されている。当該研究協力者が研究に復帰できるようになったため、個人結果の解釈をして文書化し、調査協力者に発送するという作業(心理判定所見作成と同様の判断業務)に必要な人件費とデータ管理システムの開発費等に充当する予定である。また、本年度は最終年度になるため、研究成果の公開にかかる旅費や論文投稿料も発生する。
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