2016 Fiscal Year Research-status Report
アレキシサイミアに対する対人関係療法導入のためのアセスメントツール開発
Project/Area Number |
15K04162
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
馬場 天信 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (00388216)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アレキシサイミア / 自立と分離 / 見捨てられ不安 / 親子間相関 / 母親への願望 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレキシサイミア傾向者の対人関係のパターンを推定するために、Web調査を実施し、子ども、父親、母親のマッチングデータを収集し、83家族(父親、母親、子どもセット)の回答を得た。調査ではアレキシサイミア傾向者の対象関係を推定するために、母子関係において母親に対する願望、実際の母親の関係、母親といるときの自分の関係について強制選択で回答を求めた。選択肢はLuborskyの中核葛藤テーマ評定で用いる選択肢とした。また、家族成員全員にTAS-20、愛着尺度であるECR-GO等を回答させた。更に、母親の性格的特徴について自由記述を行わせた。 分析の結果、アレキシサイミア傾向者は、母親に対する願望において「自分を主張したい、独立した存在でありたい」と回答した者の割合が30%と他の群より顕著に高く、それ以外の対象関係では顕著な違いは認められなかった。相関分析の結果、子どものアレキシサイミア傾向は、子ども自身の見捨てられ不安と.64、母親の見捨てられ不安と.62、母親のアレキシサイミア傾向と.47、父親のアレキシサイミア傾向と.43で有意な正の相関関係を示した。自由記述に関するテキストマイニング分析はまだ分析中である。 以上の結果から、子どものアレキシサイミア傾向は、両親のアレキシサイミア傾向と関連性が高く、特に母親の見捨てられ不安の高さが関係し、そこから自立したり、独立したいと思いながら、過干渉や過保護的な態度に絡めとられている可能性が示唆された。アレキシサイミアの対象関係では自立と分離をテーマとした関係性が大きく影響していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内に父親、母親、子どものセットデータを回収するWeb調査を実施しており、調査実施に関しての遅れはない。しかしながら、2015年度と2016年度で収集した自由記述データの量が膨大であり、自由記述データのテキストマイニング分析に遅れが生じている。自由記述回答であるためやむを得ないこととはいえ、その分析手法が多岐に渡り、どのような方法で特定化を行うのが望ましいかは分析を繰り返すなかで見えてくると思われる。また、当初の予定ではアレキシサイミア傾向者の不得意とする対人状況の特定とそこでの感情処理の特徴を明確にすることになっていたが、対人状況の特定や苦手とする対象の特定はある程度できたものの、そこでの感情処理の在り方については現状での分析結果では特定が困難であることが予想される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、2017年度が最終であるため、まずテキストマイニングデータの分析手法とその応用や工夫については、テキストマイニング分析の専門家に助言を求めることを考えている(夏休み期間)。また、本年度はこれまでの分析結果をもとにアレキシサイミア傾向者の対人状況での感情処理の特徴をアセスメントするツール作成を目的としていたが、9月~12月までに一通りの分析結果を整理し、最終のWeb調査を1月に実施することとする。予想と反してアレキシサイミア傾向者の対人パターンもかなり複雑化しているようであり、PFスタディのような吹き出し付きの測定ツールの素案となるものを完成させることに目標の水準を少し下げ、アレキシサイミア傾向者の対人関係の在り方を抽出しやすい尺度作成を目指す。
|
Causes of Carryover |
2017年度のWeb調査実施にかかる経費を想定したところ、回収データ数でかかる予算が大きいため9万程度を次年度使用として残した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に実施するWeb調査1回分で2016年度残額分を加えたもの全てが予算消化される予定である。
|