2017 Fiscal Year Research-status Report
アレキシサイミアに対する対人関係療法導入のためのアセスメントツール開発
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15K04162
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
馬場 天信 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (00388216)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アレキシサイミア / 対人信念 / 失感情症 / 対人関係 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレキシサイミア傾向者の対人関係における信念の特徴を明らかにするためにWeb調査を実施した。対象は20~40代の一般成人452名(男性225名、女性227名、平均年齢35.33歳)とし、筆者らが独自に作成した対人関係信念項目43項目とToronto Alexithymia Scale-20日本語版(小牧,2015)を使用した。 因子分析(バリマックス回転、主因子法)を行った結果、固有値の推移から3因子を想定し、共通性の低い項目と因子負荷が複数の因子にまたがって高かった項目を削除し、最終的に22項目3因子(累積寄与率56.79%)を抽出した。第1因子は自己不信や他者不信、被害的な信念で構成されており「自己他者不信・パラノイア信念」(α=.94)、第2因子は甘えを満たすよう他者をコントロールできることを当然とする内容であり「甘え充足・他者コントロール信念」(α=.88)、第3因子は常に他者の支えになり、貢献できる強い自己であらねばならないという内容であり「万能的自己信念」(α=.80)とそれぞれ命名した。 TAS-20の国際基準のcut off pointにならい61点以上をalex群(N=112)、52点以上~60点未満をpossible-alex群(N=160)、51点以下をnon-alex群(N=180)と分類し、3群を独立変数、信念尺度の3因子を従属変数とした1要因の分散分析を行った。その結果、第1因子においてアレキシサイミア傾向者は有意に高い得点を示したが、第2因子および第3因子についてはnon-alex群が有意に低い得点を示した。アレキシサイミア傾向者は自己や他者への不信から親密な関係性を構築することを困難にし、他者の接近を迫害的に捉えやすい対人信念を有していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アレキシサイミア傾向者の対人関係療法導入のためのアセスメントツール開発を本研究では進めているが、これまでの過年度の研究結果より、当初の最終目標であったPFスタディーのようなアレキシサイミアに特異的な状況設定での反応を直接捉えるツール開発までには至っていない。最終年度である本年度は、アレキシサイミアの対人関係における対人信念の特徴を明らかにする尺度開発とその特徴の抽出まではできたが、最終目標まで到達していない理由は、これまでの調査結果からアレキシサイミア傾向者に特異的な対人状況の抽出が困難であることが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、当初最終目標としていた対人状況特異的なツール開発は断念し、むしろ、アレキシサイミア傾向者が対人状況でどのようなメンタライズができているのか、他者の気持ちの想像のどういう点が困難であるのかを調査研究で明らかにすることに焦点を変更する。この変更によって、アレキシサイミアの状況特異的な問題というよりも、通常の対人関係場面における想像力の問題と実際の対人関係の問題を捉えることが可能となり、長期的には対人状況におけるメンタライゼーションの問題からその特徴をアセスメントすることが可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
本年度は公認心理師資格のカリキュラム申請および学内における科目認定手続きについて学科長と専攻主任という立場から、業務過多となり、Web調査が1回しか実施できず、もう1回の調査実施ができなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 次年度は、本年度取り残したアレキシサイミア傾向者のメンタライゼーション能力をアセスメントするWeb調査を実施する予定である。
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