2015 Fiscal Year Research-status Report
リハビリテーション病院における音楽療法の効果判定と技法開発のための実践的研究
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15K04169
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
小原 依子 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (40388319)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽療法 / リハビリテーション / パーキンソン病 / 評価表開発 / 効果判定 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療面でも注目され、臨床応用されてきている「音楽療法」は、少子高齢社会対策や予防医学、健康増進の推進の動向にも伴い、福祉、保健、教育場面で大きな拡がりをみせている。今後ますます社会への定着を図るには、その効果の科学的裏付けが求められる。本研究の目的は、効果判定方法として、心身障害、認知症等を主とした高齢者領域で開発を行ってきた、音楽療法用評価表(MTCL-YK(S))、そしてリハビリテーション病院領域の特に注意障害対象のチェックリストとして改訂・開発を行ったMTCL-YK(DOA)を用いて、「パーキンソン病」において適用可能な評価表として改訂・開発を行ことであり、当該領域において有効な音楽療法プログラム・技法についても平行して検討する。 本研究における平成27年度の研究実施計画は、第1段階として「リハビリテーション病院(パーキンソン病対象)における音楽療法実践の技法の実態・文献調査と整理」、そして第2段階として「本研究で実施する音楽療法プログラム・技法の選定と実践開始」であった。 まず、リハビリテーション病院で行われている音楽療法について、関連学会での最新の報告や文献研究をもとに、対象とされている疾患・障害状況の把握と整理を行った。そして、リハビリテーション病院での音楽療法実践者(研究協力者)との会合をもちながら、第1段階で必要な、評価対象となる音楽療法現場の実践内容についてより詳細な把握を行い、セッションのビデオ映像をもとに、より具体的な情報を収集した。第2段階にあたる内容については、特にリハビリテーション病院におけるパーキンソン病症状をもつ対象者に対しての有効な音楽療法の技法・プログラムを吟味し、選定を行った。 会合をもつ中で、MTCL-YK(S)からの改訂・開発がより適切と判断され、プログラムセッションの実施及びMTCL-YK(S)の評価表による評価を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における平成27年度の研究実施計画は、第1段階として「リハビリテーション病院(パーキンソン病対象)における音楽療法実践の技法の実態・文献調査と整理」、そして第2段階として「本研究で実施する音楽療法プログラム・技法の選定と実践開始」であった。そこで、研究協力者間での文献収集や学会等においても情報収集しながら、実際の音楽療法実践場面のビデオ映像を用い検討を行い、パーキンソン病対象の音楽療法プログラムの選定を行うことができた。 音楽療法実践プログラム内容は、「1.発声課題:腹式呼吸の習得、発声練習、持続発声、2.リズム課題:(1)「パーキンソン病に聴く音楽療法CD」(林明人)の聴取、(2)メトロノームに合わせてリズム打ちまたは指でタッピングを行う、(3)go-stopの合図をしてリズム打ちを開始、停止する、(4)速度は患者の歩行速度に+10%を目指す、右手、左手、交互打ちをおこなう。」であり、リハビリテーション病院において、この音楽療法セッションの実践と、MTCL-YK(S)での評価を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策は、第3段階の内容で、手順としては、以下の(1)~(3)となる。 (1)MTCL-YK(S)の修正案1の作成<調査1>:リハビリテーション病院にて「パーキンソン病」を対象とした音楽療法実践において、現在のMTCL-YK(S)を用いて、約5週間~2ヶ月間、音楽療法の対象者個々人についての評価を行い、評価のしづらさや問題点を明らかにし、評価表使用に際しての視点・視座を統一する。その際、他の心理学的指標も用いて、選定されたプログラムの有効性を分析し、確認を行う。その上で、問題点としてあがった点について、精神医学、臨床心理学、音楽療法でのそれぞれの専門家間で検討を重ね、下位項目あるいは数量化手法についての修正案(MTCL-YK(S)-1)を作成する。 (2)MTCL-YK(S)-1の妥当性検証1<調査2>:修正された評価表を用いて、再度、約5週間~2ヶ月間、各現場において評価を行う。その際に、情報の得られる医学的・心理学的指標(心理検査や医学的検査等)や生理学的指標(自律神経系、循環器系(皮膚温度など))の結果との相関を分析し、併存的妥当性を確認する。 (3)MTCL-YK(S)-1の信頼性検証2と修正案2の作成:さらに厳密な信頼性検証を行うために、音楽療法実践の録画映像を、研究協力者間で同時に視聴し、行動観察を行う。そして評価表の「修正前」(MTCL-YK(S))と、(1)で作成された「修正後」(MTCL-YK(S)-1)を用いて評価を行い、評価者間のズレが減少しているかどうかを数量的に分析する。問題点としてあがった点についての整理を行い、修正案MTCL-YK(S)-2を検討する。
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Causes of Carryover |
データ分析用ノートパソコンが2台必要となったが、平成27年度内に2台購入は予算上難しかったため、残額を持ち越し、次年度にもう1台購入したいと考えたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画としては、交付予定の直接経費は700,000円であり、繰越金額が45,116円であるため、「物品費」として、データ分析用ノートパソコンを含めた物品・図書を545,116円、「旅費」として30,000円、「人件費・謝金」として、研究成果報告のための英語校正等を含めて140,000円、その他:30,000円という内訳で、計画をしている。
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