緩和ケアにおける遺族の不適応を予測するアセスメントツールの開発と評価

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K04170
• Research Institution: Kobe Shoin Women's University
• Principal Investigator: 大和田 攝子 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (10340936)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 遺族ケア / アセスメント / 死別 / 悲嘆 / 緩和ケア

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、医療従事者が患者の死別前から家族の不適応を予測するためのアセスメントツールの開発を目的とする。研究代表者はこれまで研究協力者である医療機関スタッフ（緩和ケア科）の協力を得て、遺族に対して死別直後から切れ目なくケアを提供できるようなプログラムを開発し、実践を行ってきた。しかし、個々の遺族のニーズや状況に合わせたきめ細やかなケアを提供するには、限られた資源では限界がある。そこで、患者の死別前から家族の不適応を予測し、早期に支援・介入を行うことは、限られた資源を有効に活用する上で必要不可欠である。本研究では、患者の死別前から前方視的に調査を実施することにより、医療従事者が家族の不適応を予測するための簡便かつ有効なアセスメントツールの開発を目指す。
本年度は、昨年度に引き続き、悲嘆予測チェックリストを用いて看護師による家族の評価を行った。平成28年4月1日から平成29年3月31日までの1年間に緩和ケア病棟で死亡した患者の家族（患者の主たる介護者）について、患者の担当看護師がリスクアセスメントを行った。質問項目は、死別後の遺族の不適応を予測することを目的に作成された独自の悲嘆予測チェックリストと、支援や介入の必要性を主観的に評価するリスク総合評価、自由記述による評価などである。平成29年3月末時点で対象となる患者の家族は355名であり、病棟に勤務する約20名の看護師が、患者の入院中（闘病から死亡までの期間）に患者の家族について評価を行った。
さらに、患者の家族（遺族）には患者の死から6か月および1年が経過した時点で、自記式質問紙を郵送し、精神症状の評価を求めた。質問項目は複雑性悲嘆を測定するためのICGや気分・不安障害を測定するためのK6などである。
なお、看護師による家族の評価、および遺族に対する質問紙調査は次年度も行う予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

悲嘆予測チェックリストを用いて患者の担当看護師による家族のリスクアセスメントを行えたこと、また患者の家族（遺族）に対して質問紙調査を実施できたことは、本年度の成果だと考える。本研究では、看護師によるリスク評価と遺族自身による精神症状の評価（6か月後と1年後）の両方とも揃っているデータを分析の対象とし、それらの関連を検討するが、現時点で分析の対象となるのは39名であり、十分なデータ数が得られていない状況である。このように、対象者数の問題はあるものの、概ね順調に進展していると言える。

Strategy for Future Research Activity

先述したように、遺族調査に関して質問紙の回収率が低く十分なデータ数が得られなかったため、看護師によるリスク評価および遺族に対する質問紙調査は次年度も引き続き実施する予定である。最終的には、看護師によるリスク評価と遺族自身による精神症状の評価の両方とも揃っているデータを分析の対象とし、それらの関連を検討する。

Causes of Carryover

守秘性の高いデータを取り扱うため、インターネットに接続しない専用のノートパソコンを購入する予定であったが、諸事情により次年度に先送りすることとなった。このため、本年度の未使用額はその経費に充てる予定である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

インターネットに接続しない専用のノートパソコンを購入する。あとは、質問紙送付のための通信費（切手代等）、研究発表のための旅費などに充てる予定である。