2015 Fiscal Year Research-status Report
認知症介護にかかわる家族の日常生活における回想行為と精神的健康の関連に関する研究
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15K04171
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
奥村 由美子 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (70412252)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症介護 / 家族 / 精神的健康 / 回想 / 心理社会的発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症介護では、認知症の人と家族介護者の双方への支援が必要である。本研究は、家族介護者が自身を「介護者」であると同時に「一人の人」と認識して生きるために、日常の回想行為の役割を明らかにしようとするものである。そのために、家族介護者の精神的健康の維持、促進に向けた日常の回想行為の意義を明らかにし、導入方法を検討することを目的としている。 平成27年度には、まず調査票の改訂と改訂版調査票による調査を計画していた。調査票の改訂にあたり、国内外の関連文献のレビューを行うとともに、予備調査結果について再度検討した。予備調査に用いた調査票は、基本属性、介護状況のほか、精神的健康の指標として、介護負担感、精神的健康度、主観的健康観、認知症イメージ、心理社会的発達段階、日常生活における回想状況を尋ねる項目などにより構成されていた。予備調査を実施したところ、複数の認知症患者を同時に、また継時的に介護しているというような、詳細な介護状況を把握しにくかったほか、項目によっては、回答内容の明確な分類が困難である場合や、回答への抵抗や負担があるのではないかと感じられる場合もあった。そこで、これまでの介護経験や現在介護中の認知症の人の数を尋ねる項目を加えたほか、他者に話を聴いてもらえるかどうかを、聴いてもらう話の内容により尋ねていたものを一つにまとめ、介護前や現在の介護者と要介護者との関係については、介護開始までのかかわりの程度を尋ねるにとどめた。日常の回想に関しては、回想内容ではなく回想する状況や回想後の気分を尋ねるように整理した。この他、主観的健康観と認知症イメージの項目は削除した。 現在、地域のクリニックに通院する認知症患者の家族介護者を対象に、改訂版調査票による調査を実施中である。調査票は、医療機関を通じて受診時に配布され、回答後は回答者から研究代表者に郵送されてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画にあげた調査票の改訂と、認知症患者の家族介護者への改訂版調査票による調査は、計画のとおり実施できている。ただし、研究計画から、主に調査協力機関と調査対象、および、その数について変更を行った。 計画においては、調査対象者として認知症介護にかかわる家族会、デイサービスやデイケア等を利用する認知症患者の家族介護者約200名を想定していたが、調査対象者の条件をできるだけ揃えるために、地域で認知症の診療を行っているクリニックに協力を求めることとした。そのため、調査協力先の選定、対象医療機関への説明および同意を得るまでに時間を要した。結果として、地域のクリニックに通院する認知症患者の家族介護者に調査協力を得られることとなり、調査対象数は、約1500名に変更することとなった。 調査票は、平成27年度中には600部を協力機関に送付し、その機関を通じて受診時に配布されている。回答後は回答者から研究代表者に郵送され、278部回収できている。
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Strategy for Future Research Activity |
改訂版調査票による家族介護者への調査は平成27年度中を計画していたが、調査対象総数の変更にともない、平成28年度には、協力機関にさらに900部の調査票の送付を予定し、回答後の調査票の回収も継続する。あわせて、平成28年度は、回収した調査票の回答の整理と分析を行う。 改訂版調査票の作成において検討した事項について、平成28年度に行われる国際学会において発表する予定である。また、改訂版調査票を用いた調査による成果を平成29年度の国際学会にて発表するために、その準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度には、計画において想定した改訂版調査票による調査協力機関を変更したことにともない、調査対象者数が大幅に増大した。そのために、調査に関わる費用を多く要することとなり、主に、旅費や人件費・謝金の使用計画を変更したことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に行った家族介護者への調査を平成28年度も継続するため、それに要する費用が計画よりも多く必要となり、平成27年度に生じた次年度使用額は調査実施の費用として使用する予定である。
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