2016 Fiscal Year Research-status Report
認知症介護にかかわる家族の日常生活における回想行為と精神的健康の関連に関する研究
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15K04171
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
奥村 由美子 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (70412252)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症介護 / 家族 / 精神的健康 / 回想 / 心理社会的発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に調査票を改訂し、改訂版調査票による調査を地域のクリニックに通院する認知症患者の家族介護者(以下、介護者)を対象に開始したが、平成28年度にはその調査を同様の調査機関、および調査方法により継続した。 調査票は合計1500部を協力医療機関に送付し、平成28年度の調査票回収分は346部であった。分析についてはまず平成27年度分279名分について中心に行い、その成果については平成29年度開催の国際学会での発表を予定している。 回答について介護者が65歳以上の高齢群と65歳未満の若年群で比較したところ、高齢群では、介護者が「私は私である」と認識している場合に同一性得点が高かったことから、認知症介護における高齢介護者には自己同一性の維持をめざした支援が必要であると考えられた。さらなる分析では、「自分らしく過ごせている」と回答した介護者では精神的健康度が高く、介護負担感が低かった。その内訳をみると、65歳未満の女性に多く、認知症のタイプや要介護度、家族構成、介護経験、介護者との続柄、仕事の有無そのものでは差はないが、仕事をしている場合にはフルタイムで働いている場合が多かった。また、介護を助けてくれる人がおり、日々の介護には自分の思うように取り組めていると認識し、今後の介護を継続する意思を持っている場合が多く、さらに、自分自身については、「自分は介護者」ではなく「自分は自分」と認識している場合が多かった。 これらの結果から、介護者には、介護者の年齢や性別を考慮するとともに、介護者自身が自分らしく過ごせているという認識を維持、向上できるような介護環境の確保、および自己認識を形成できるような支援をすることが、介護者自身の精神的健康を促進し、穏やかに介護を継続できる可能性を高めると考えられた。 あわせて、平成28年度調査分の回答の整理と分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画においては、調査対象者として認知症介護にかかわる家族会、デイサービスやデイケア等を利用する認知症者の家族介護者(以下、介護者)約200名を想定していたが、調査対象者の条件をできるだけ揃えるために、地域で認知症診療を行っているクリニックに協力を求めたところ、調査対象としてそこに通院する認知症患者の介護者約1500名に協力を得られることとなった。 協力医療機関には、受診状況を考慮して平成28年度にも調査票を追加送付した。調査対象数が多く見込めることにはなったが、協力医療機関ではそれぞれの認知症患者への診療に時間をかけておられ、予約制のため受診までに時間を要する場合もあることから、質問紙調査にかける期間を延長する必要があった。そのために、質問紙調査後に予定していた回想法による面接調査の開始を遅らせることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、平成27年度調査分の分析結果をふまえた成果について国際学会で発表する。あわせて、これまでの検討において得られた観点をふまえ、平成28年度以降調査分の回答の整理と分析を続ける。そして、平成30年度に開催される国際学会での成果発表に向けての準備を行う。 また、質問紙調査の実施後には、質問紙調査時に同意をえた介護者への回想法による面接調査を実施する予定であるため、その実施方法を検討し、面接調査を開始することを予定している。
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Causes of Carryover |
平成28年度には、当初の研究計画において想定した改訂版調査票による調査協力機関を変更したことにともない、調査対象者数が大幅に増大したことから、調査に関わる費用、さらには調査期間を多く要することとなった。そのため、質問紙調査後に実施を予定している回想法による面接調査にかかわる旅費や人件費・謝金を使用するに至らなかったことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、介護者への質問紙調査に加えて回想法による面接調査を開始する予定である。したがって、平成28年度に生じた次年度使用額は、主に面接調査実施にかかわる費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)