2017 Fiscal Year Research-status Report
認知症介護にかかわる家族の日常生活における回想行為と精神的健康の関連に関する研究
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15K04171
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
奥村 由美子 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (70412252)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症介護 / 家族 / 精神的健康 / 心理社会的発達 / 回想 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、地域のクリニックに通院する認知症患者の家族介護者(以下、家族)への調査を継続し、合計680名による回答を得た。このうち、主に、認知症の人を自宅で介護する家族を対象として、基本属性、介護状況、介護への認識のほか、精神的健康度(日本語版WHO-5(WHO-5-J)、エリクソン心理社会的段階目録検査(EPSI))、介護者の自己認識、日常経験することの回想などの関連を検討した。 家族を65歳以上(高齢群)と65歳未満(若年群)の2群により比較したところ、精神的健康度の指標であるWHO-5-Jの合計得点は、若年群の方が高齢群より高かった。高齢群に限っては、自分自身のことを「自分は介護者」ではなく「私は私である」と認識している場合にWHO-5-J合計得点とEPSIの同一性得点が高かった。精神的健康度や自己認識について介護環境による差は認められなかった。 これらの結果から、在宅介護という同様の介護形態であっても、家族自身の年齢により負担のあらわれ方が異なり、とくに高齢の家族には、若い家族よりも精神的負担を軽減するための支援がより多く必要であることや、アイデンティティの維持、促進のための心理的支援を明らかにする必要があると考えられた。 また、ADおよびVaDの人の家族の精神的健康度については介護を助けてくれる人がいる場合に高く、さらに、話を聴いてくれる人がいることとも関連する可能性が示された。回想については、「誰かと一緒に」「要介護者や自分の体調が良い」という状況での、「要介護者にかかわること」「良いこと」「最近のこと」という内容の回想が、家族の精神的健康と関連する可能性が示された。 日常生活において望ましい回想のあり方を提案することは、家族の精神的健康を維持、促進し、質の高い介護を継続できる可能性を高めると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
調査対象者の条件を揃えるために当初の計画を変更し、地域で認知症診療を行う医療機関に通院する患者の家族に協力を得たことで、その数が大幅に増えた。通院時に調査協力を求めたが、予約制のため受診までに時間を要する場合もあった。そこで、平成29年度は、実施予定であった面接調査ではなく質問紙調査を継続した。あわせて、研究者自身が所属先での教育管理職をつとめ、その業務に時間を要したことからも進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの質問紙調査により得られた回答全体についての検討を続け、成果公表に向けての準備を行う。あわせて、平成29年度に実施予定であった面接調査に向けての準備と実施を行う。
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Causes of Carryover |
平成29年度には、当初の研究計画において想定した改訂版調査票による調査協力機関を変更したことにともない、調査対象者数が大幅に増大したことから、調査に関わる費用、さらには調査期間を多く要することとなった。また、研究者自身の所属先業務に時間を要したことによっても進捗が遅れた。そのため、質問紙調査後に実施を予定している回想法による面接調査にかかわる旅費や人件費・謝金を使用するに至らなかったことから、残額が生じた。
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Research Products
(2 results)