2015 Fiscal Year Research-status Report
二重経路モデルにもとづくADHD診断補助システムの開発
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15K04179
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
池上 将永 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20322919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 雅治 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80183060)
佐伯 大輔 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (60464591)
空間 美智子 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 准教授 (00623406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 注意欠如・多動性障害 / 遅延割引 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遅延割引を指標とした行動実験と近赤外分光法(NIRS)による前頭前皮質活動の計測を組み合わせることにより、ADHDの診断補助システムを開発することを目的としている。平成27年度は、予備的検討として、ADHD児を対象とした遅延割引質問紙の実施、および健常な大学生を対象とした遅延割引課題遂行中の前頭前皮質活動の計測を行った。 平成27年度では、まずADHD児および自閉症児を対象として、遅延割引を行動的に測定するための質問紙検査を実施した。質問紙は、空間ら(2012)による就学児用の遅延割引質問紙を発達障害の児童向けに改変した省略版を作成して使用した。その結果、6歳から14歳までのADHDもしく自閉症児において、遅延割引率の算出が可能な回答が70%の被検児から得られ、本質問紙を用いて定型発達児との遅延割引率の比較が可能であることが示唆された。6~14歳のADHD児の遅延割引率は定型発達児に比べて大きい傾向が見られ、報酬選択過程における衝動性が示唆された。この結果は、ADHDにおける遅延割引率の増加を示す過去研究と一致する。 また遅延報酬課題を遂行中の前頭前皮質活動を測定する予備実験を、健常な大学生を被験者として実施した。課題には、前述の簡易版遅延割引質問紙をNIRS実験に適合するように改変し、被験者の年齢に合わせて報酬量を調節したものを用いた。その結果、課題遂行中に有意な前頭前皮質の活動は見られなかった。行動指標を分析した結果、常に遅延報酬を選択するという方略が見られ、この課題では即時報酬と遅延報酬の間の(葛藤を伴う)選択がなされていたわけではないことが明らかとなった。したがって、NIRSによる計測時の課題手続きについてはさらに工夫が必要であり、これは来年度の課題とされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画として、ADHD児を対象とした遅延割引検査の実施可能性を探ること、またその予備的な結果を得ることが予定されていた。この点については当初の計画通り進捗しており、遅延割引質問紙をADHDの診断補助的な検査に発展できる可能性も示唆される。また平成27年度にはNIRS実験に適用できる遅延割引課題を作成しその予備実験を行う予定であった。この点について、課題作成と予備実験を予定通りに行ったが、作成した課題では前頭前皮質の有意な活動を得るには至らなかった。その後の文献調査によって、課題の手続きを変更することによってこの問題を解決できる可能性が考えられたため、平成28年度では課題手続きを中心にNIRS用課題をさらに工夫することが課題となった。以上から、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、ADHD児を対象とした遅延割引質問紙を用いて引き続きデータ収集に努め、結果の一般性を確認していく。また、検査対象児の臨床的な症状(ADHD-RS等の臨床尺度のスコア)や治療薬の服用の有無等と遅延割引率の関連性を探る分析を行う。NIRSを用いた前頭前皮質活動の測定実験については、年度前半に行動課題を改良して健常な大学生を対象とした検討を行い、NIRS実験用の課題を確立する。その後、ADHD児を対象としたNIRS実験を行う。ADHD児を対象としたNIRS測定では、反応抑制や作業記憶を調べる課題も合わせて実施し、課題間の関連や個人の特性に着目した分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
池上将永(研究代表者):平成27年度末(3月)に予定されていた研究打ち合わせが、研究協力者(北海道こども心療内科氏家医院・荒木医師)の病院勤務の都合により4月に延期されたため、旅費の次年度使用が生じた。この研究打ち合わせはすでに実施済みである。 空間美智子(研究分担者):実験制御、データの保存、および、データの解析に使用するためのノート型パーソナルコンピュータを購入する計画であったが、昨年度の分配額では予算不足であった。次年度に繰り越し、この購入費用の一部として使用する計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の予算と合わせて、実験制御およびデータ解析に必要なノート型パーソナルコンピュータを購入する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Social Dilemma and Social Discounting in Elementary School Children.2015
Author(s)
Sorama, M., Ito, M., Shimizu, H., & Rachlin, H.
Organizer
The Association for Behavior Analysis International, Eighth International Conference, Kyoto.
Place of Presentation
Hotel Granvia Kyoto; Kyoto, Japan
Year and Date
2015-09-27 – 2015-09-29
Int'l Joint Research
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