2016 Fiscal Year Research-status Report
幼年期のストレスによる記憶・学習障害と亜鉛の抗酸化作用に関する研究
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15K04189
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
東 超 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (90326322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 真弓 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40295639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 早期母子分離 / 海馬 / 亜鉛 / セレン / 過酸化物 / 銅 / マンガン |
Outline of Annual Research Achievements |
幼年期のストレスによる記憶・学習障害と抗酸化作用を有する微量元素である銅、マンガンとの関係を明らかにするために、早期母子分離群(生後1日~14日、3時間/日の母子分離を行う)雄20匹と対照群雄20匹のモデルマウスを作成し、生後13週で海馬、前頭葉と血液を採取し、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて海馬と前頭葉の銅、マンガン含量を測定し、ELISA法で血漿のDNA酸化損傷マーカー8-OHdG量を測定した。その結果:1.海馬のCu含量の比較:分離群のCu平均含量は16.20μg/gであり、対照群のCu平均含量は17.38μg/gであった。両群間に有意な相関が認められなかった(p=0.151)。2.海馬のMn含量の比較:分離群のMn平均含量は1.913μg/gであり、対照群のMn平均含量は1.796μg/gであった。両群間に有意な相関が認められなかった(p=0.164)。3.前頭葉のCu含量の比較:分離群のCu平均含量は13.17μg/gであり、対照群のCu平均含量は14.16μg/gであった。両群間に有意な相関が認められなかった(p=0.110)。4.前頭葉のMn含量の比較:分離群のMn平均含量は1.317μg/gであり、対照群のMn平均含量は1.429μg/gであった。両群間に有意な相関が認められなかった(p=0.180)。5.血漿の8-OHdG量の比較:分離群の8-OHdG量は0.1993ng/mlであり、対照群の8-OHdG量は0.1665ng/mlであった。分離群は対照群より高かった。しかし、有意な相関が認められなかった(p=0.389)。以上の結果から、海馬と前頭葉の銅、マンガン含量は、早期母子分離のストレス負荷によって有意に変化しなかった。幼年期のストレス負荷によって、発達期の海馬の銅、マンガンの抗酸化作用への影響しないことを示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼年期のストレス負荷によって、発達期及び成長後の記憶・学習能力への影響と海馬の抗酸化作用を有する微量元素である亜鉛、セレン、銅、マンガン含量およびDNA・蛋白・脂質の酸化との関係を明らかにするために、現在までに早期母子分離群(生後1日~14日、3時間/日の母子分離を行う)と対照群のモデルマウスを作成し、生後13週で海馬、前頭葉と血液を採集し、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて海馬と前頭葉の亜鉛、セレン、銅、マンガン含量を測定し、ELISA法で血漿の蛋白質酸化損傷マーカーであるカルボニル化蛋白、DNA酸化損傷マーカーである8-OHdG量を測定した。現在までの測定結果:1.早期母子分離のストレス負荷により海馬のセレン含量が有意に低下したことが分かった。しかし、海馬と前頭葉のZn, Cu, Mn含量が有意な変化しないことが分かった。すなわち、早期母子分離のストレス負荷により抗酸化作用を有する微量元素であるセレン、亜鉛、銅、マンガンの4元素のうち、海馬のセレン含量のみが有意に低下した。これから早期母子分離においてセレンの役割についてさらなる研究を続けていく。2. 早期母子分離のストレス負荷により血漿のカルボニル化蛋白、8-OHdG量が上昇したが、有意な相関が認められなかった。脂質酸化マーカーである血清マロンジアルデヒドのさらなる研究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 幼年期のストレス負荷により発達期及び成長後の記憶・学習能力と海馬組織のセレンを有する抗酸化酵素および血漿の脂質酸化との関係を明らかにする。早期母子分離群と対照群のモデルマウスを作成し、生後13週でマウスの海馬と血液を採取し、血漿の脂質酸化マーカーであるマロンジアルデヒド、海馬組織の活性中心にセレンを有する抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)の測定を行う。 2.セレンの投与による記憶・学習障害の改善に対する治療の試み。現在までの実験結果、早期母子分離のストレス負荷により抗酸化作用を有する微量元素であるセレン、亜鉛、銅、マンガンの4元素のうち、海馬のセレン含量のみが有意に低下したことが分かった。これからセレンを投与することによって記憶・学習能力への影響を分析し、幼年期の記憶・学習障害に対する治療法の開発を目指す。亜セレン酸ナトリウム投与量によって3群(正常、欠乏、および過剰)にわけて以下の実験を進め、各群間の比較検討を行う。①早期母子分離マウスモデルを作成し、母マウス出産3週間前から子マウス行動実験まで亜セレン酸ナトリウムの各群の投与量を投与する。②生後13週において恐怖条件付け試験の記憶・学習の行動実験を行い、さらに海馬と血液を採取する。誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて海馬のセレン含量を測定し、血漿8-OHdG、血漿マロンジアルデヒド、血漿カルボニル化蛋白質、海馬組織のグルタチオンペルオキシダーゼを測定する。
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Research Products
(1 results)