2015 Fiscal Year Research-status Report
日英バイリンガルの視覚的単語認識:L2表記表象と処理システム詳細の解明
Project/Area Number |
15K04194
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中山 真里子 早稲田大学, 文学学術院, 研究員 (40608436)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日英バイリンガル / 同異課題 / L2文字表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日英バイリンガルの語彙表象に関して、表記の情報に焦点をあて研究を行うものである。
研究初年度は、文字レベルの表象についての研究を行った。英語(またはアルファベット言語)を母国語とするものは、大文字と小文字という見た目の違いにかかわらず、抽象化された文字表象を持っているとされている。L1語とL2語の表記形態が著しく異なる日英バイリンガルでも、L2語の文字について同様な表象を持つのか, 持たない場合は英語力の上達に伴い新たに表象を獲得可能であるのかを明らかにするため、日英バイリンガルを被験者としてマスク下のプライミングパラダイムの同異課題を課し検証を行った (N = 80)。また、同刺激を用いて、英語母国語話者のデータも収集した (N = 80)。実験の結果、バイリンガルの場合でも、小文字/大文字間に統合された表象を持つことが示唆された。このことは、表記の異なるバイリンガルであっても少なくともL2文字レベルの情報は、英語母国語話者と同様に抽象化されていることが示された。一方で、バイリンガルは、英語母国語話者よりも、音韻情報をより多く活用する可能性が示された。また、アルファベット文字を刺激としたのにもかからわず、全体の反応時間は、バイリンガルのほうが英語母国語話者より早く、このことは、L1語の特性(漢字が存在するため、文字の形態情報に着目しやすい)がL2語の文字処理にも影響を与えている可能性を示した。
今年度は、英語話者を対象として行われた過去研究で使われた刺激を使用して実験を行い、上記結果にさらなる信頼性を持たせる。実験を経て、その結果を含めた形で論文の執筆を完了する予定でいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、バイリンガルおよび英語母語話者と対象として計4回の実験を行い、データを収集した。また、論文の執筆をすでに開始しており、追加の実験を終了させれば比較的速やかに投稿が可能になる段階にいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前半期に上記の追加実験を行い、データを取りまとめる。予測通りの結果の場合は、成果を論文として投稿する。
また、単語表象の発達においても、大文字/小文字間の差異なく、抽象化された表象が発達するかという疑問の解明を試みるための実験を開始する。
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Causes of Carryover |
部署内で、実験が可能な装置/スペースを設置し、データの収集が可能になったため、当初費消予定であった高額な物品支出が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表研究者の所属が変更となったため、所属機関先での実験環境を構築するためにPC等の購入を計画する。その他は、計画通り、実験のためのRA雇用、被験者謝礼等に主な支出を見込んでいる。
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