2016 Fiscal Year Research-status Report
日英バイリンガルの視覚的単語認識:L2表記表象と処理システム詳細の解明
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15K04194
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中山 真里子 立教大学, 現代心理学部, 特任准教授 (40608436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 泰志 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00386567)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 単語認識 / バイリンガル / Masked Priming / L2語彙表象 / L1語彙表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日英バイリンガルの語彙表象に関して、特に表記の情報の処理に焦点を当てて研究を行うものである。研究2年度目は、バイリンガルの母語である日本語における文字表象の抽象化について行った研究成果が国際誌に掲載された。一般的に、日本語のひらがな/カタカナは、英語における小文字/大文字との対応に類似していると思われていたが、実験の結果、日本語におけるひらがな/カタカナの文字は抽象化された表象を持たないことが示唆された。これにより、もしバイリンガルが(英語母国語話者と同様に)英語文字を抽象化して表象していた場合、それは第二言語の単語(L2語)の文字表象が母国語の形態表象/処理とは独立して発達することを示すため、今後の研究に向けた非常に興味深い問題を提案することとなった (Perea, Nakayama, & Lupker, 2016, Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory and Cognition)。 日英バイリンガルが英単語(L2語)を認識する際には、視覚的/表記的に類似した単語間における競合が起こらないことを、6つの実験で示した研究の論文執筆がほぼ終了した。L2語の語彙競合は、フランス語/英語バイリンガルで観察されていることから、この差は第一言語と第二言語の表記文字の同異によるものである可能性が高い。この論文は近日国際誌に投稿される予定である。 また、バイリンガルの単語処理において、英単語→意味→日本語単語(e.g., "book"→意味表象→ "本")のアクセスが出現頻度により異なるかを検証した研究成果(Nakayama, Lupker, Itaguchi, 2017, Bilingualism: Language and Cognition), 及び, 上記のつながりがバイリンガルの英語力により強化されることを発表した論文が国際誌に掲載された (Nakayama, Ida, & Lupker, 2016, Bilingualism: Language and Cognition)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点により、おおむね順調に進展していると判断する。 ・研究2年目となる昨年度は、所属の移動や教育上の新たな担当科目等があり、当初見込まれていたほどのエフォートを研究(特にデータ収集)に充てることができなかったものの、これまでの成果を複数の国際論文として発表する機会に恵まれ、研究で得られた知識を学術領域に還元できた。 ・執筆中の論文が複数あり、引き続き、日英バイリンガルの単語認識の仕組み理解に向けた論文を発表できる見込みである。 ・新たな所属先においてもデータ収集を開始する準備を進めており、より多様な英語力を持つバイリンガルのデータを収集できることが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
・研究3年目となる今年度は、まず、平成28年度に行うことのできなかった、文字レベルの同異課題についての追加実験を行う予定である。 ・英単語表象における、語の構成文字の抽象化(大文字/小文字)についての研究を行う。 中山(研究代表者)らが平成28年度に発表した論文では、英語の大文字/小文字と日本語のカタカナ・ひらがな文字は、よく比較対象とされるが、両者の間には抽象化は起こらないことを示すことが出来たので、果たして日英バイリンガルが英語母国語話者と同様の抽象化された英文字表象を持つのかという疑問の解明を進める。 ・追加実験を行ったバイリンガルの単語間競合についての論文が完成間近であることから今年度の第一四半期中に国際誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
代表研究者の所属の変更により、現在の所属先での実験体制を整える最中で、データ収集を行うことがなかったこと、及び、現在所属している研究機関では、学会発表・出席への補助制度が充実していることにより、海外学会に関する支出が当初の計画より少なくなったことから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究分担者との協力により引き続き活発なデータ収集を行う。 現在の所属研究機関における実験環境を整え、データ収集を開始する。 研究成果を広く知ってもらうため、国内外での学会発表の機会を増やすことを検討する。
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Research Products
(6 results)