2015 Fiscal Year Research-status Report
移動距離で切り替る作業記憶システム間の海馬―前頭前野路内相互作用機構の研究
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15K04202
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
瀧田 正寿 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (40344204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 清悦 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10440322)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オペラント / 遅延交代反応 / T迷図 / 記憶資源 / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
【オペラント箱での遅延交代反応】ラットの飼育・繁殖・課題のトレーニングは研究代表者と雇用した研究補助1名(15時間/週)が担当した。防音箱内において、中央に給水ノズルがあり左右に2ランプ2レバーのあるオペラント箱で、両手を乗せて片手ずつ交互にレバーリリースする1.5秒と3秒の遅延交代課題を訓練した:1.5秒左右と3秒左右の繰り返し:オリジナル課題は4秒と16秒、異なる日の試験(参照:Izaki et al. 2008)。正答率は約9割の個体が1.5秒の方で高く、残りは3秒の方が高かったので、異なるストラテジーが想像された。しかし、トレーニングを長期継続すると、次第に1.5秒の方が高くなり、加齢がストラテジーを変容し、身体動作だけでなく、脳内の記憶資源にも効率性(省エネルギー適応)があると想像された。【T迷図での遅延交代反応】T迷図は、連携研究者に筑波大学の研究室を見学させて頂き、それを参考にして、迷図を設計し自作した。材料のアクリル板のカットなどの1次加工は外注し、アクリル接着剤で組み上げた。T迷図の設置にあたり、広い防音領域が必要であったが、どの程度の防音レベルが必要か想定できなかったので、一時、同僚に実験室を借りて試験実験を行った。ラットは、1日3ペレットで、それを3日間ホームケージで継続飼育した後、トレーニングを行った。その3日間中、報酬餌に慣らすため、ホームケージに5粒追加し、翌日、食べられていたか・いなかったを確認した。左右の走路アーム先端に設計された、より低い凹状部分を報酬餌の置場として、左右交互に報酬餌を入れて、分単位間隔の遅延交代反応を試験した。その結果、「2ヶ月かかってもおかしくない」と連携研究者にはアドバイスを頂いていたが、幸い20日程度で正答率が80%を超えるようになった。ディープフリーザーのオンオフ音が気にならないようにホワイトノイズを導入したことも功を奏した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オペラント箱での遅延交代反応の学習記憶は、短期遅延交代反応と長期遅延交代反応の成績の比較によって、個体毎の課題遂行ストラテジーを推察できること、課題遂行ストラテジーが個体差だけでなく加齢に伴っても変わることがわかった。これは代表者が見出した「加齢によって、学習記憶能が影響を受ける事以上に、課題遂行ストラテジーが変わる(効率化・省エネルギー適応)」ことに類似する(Nomura M, Izaki Y, Takita M (CA), Tanaka J, Hori K. Extracellular level of basolateral amygdalar dopamine responding to reversal of appetitive-conditioned discrimination in young and old rats. Brain Res. 2004 Aug 27;1018(2):241-6.)。困難だとされ長期トレーニングが必要とされるT迷図の遅延交代反応の学習記憶において、ストレスコントロールが、トレーニング期間を短縮することを見出したことが、今後の実験を加速させる要因になる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、T迷図を同僚から借りてきた実験室から撤去し、新たな設置準備を行っている。違う同僚から、「使用頻度が低いから」と、ヒト聴覚試験のための高レベルの防音室を共有・貸して頂くことも視野に入れつつ、簡易防音設備を代表者の実験室で設計中である。電気生理実験の無線のデータ記録装置は、科研費採択時の予算では購入できなかったが、所内公募を経て入手することができた。今後、新たなT迷図のトレーニングを開始するとともに、無線における電波受信や記憶装置のセットアップ、解析方法の高度化(聖マリアンナ医科大学の共同研究者担当)、などを実施する。
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Causes of Carryover |
今年度の購入計画備品に対して、物品費が足りなかったが、別予算(所内公募)で購入することができた。そのため、次年度使用額が生じた。一方、所内運営交付金の配分について、2015年度以降、予断を許さないほど厳しい状態の継続が予想される。そのため「今年度の購入計画備品」分の予算は、次項【使用計画】に沿って使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
継続したトレーニングを同じ研究補助者で行う必要があるので、本年度以降の人件費に、前項【理由】で生じた次年度使用額と次年度計画予算を合わせて配分する。また、防音が必要だとわかったため、実験室の防音設計を行うためにも、前項【理由】で生じた次年度使用額と次年度計画予算を合わせて配分する。そして、発信できる研究成果が出てきたので、国際学会・国内学会・誌上などで発表を行うことに、前項【理由】で生じた次年度使用額と次年度計画予算を合わせて配分する。
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Research Products
(5 results)