2017 Fiscal Year Research-status Report
日本民間教育研究運動で形成された教育学の知の解明―授業実践1次資料の活用
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15K04208
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
本田 伊克 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (50610565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 敏之 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (80261642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 授業実践アーカイブ / 山梨県巨摩中学校 / 戦後民間教育研究団体 / 数学教育協議会 / 極地方式研究会 / 仲本正夫 / 船戸咲子 / 教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後民間教育研究団体が発行している機関紙ほかを手掛かりに、各教科、とくに算数・数学と理科の教育研究・運動の成果と課題を、1960年代から1980年代にかけて整理した。 1960年代までは、数学教育協議会(数教協)、科学教育研究協議会(科教協)など、教科の専門家と教師から構成された民間教育研究団体が教育内容・方法の研究を主導し、現場での教育実践を通して研究成果が実証されるという関係にあった。ただし、教科の単なる内容・教材研究にも、子どもの心理過程にも還元されない、創造的な授業の創出過程自体を明らかにしようとする教授学も打ち出された。1970年代以降になると、民間教育研究団体は、学歴序列が支配する競争の教育のなかで学習を忌避する子どもの実態に直面し、必ずしも教科教育研究の方向性を見出せず、可能性を逆にいくつかの教育実践の展開に見出しながら、自らの研究・運動の方向性を見出そうとした。さらに、この時代には、東北科教協から分かれた極地方式研究会(極地研)のように、教育実践で生じた事実を通して、教材研究と子どもの科学認識の発達解明の方法論を研究しようとする、1960年代とは異なるスタイルの民間教育研究団体も姿を表す。 1970年代以降には、戦後民間教育研究運動を導く教育実践が展開した。その先駆的取組みとしても位置付けられるのが、群馬県島小学校における船戸咲子らの実践である。数教協や教科研は特に、1970年代~1980年代にかけて展開された、埼玉県の山村女子高等学校における仲本正夫の高校数学教育実践に着目した。授業に教具を持ち込んだり、ゲームの要素を取り入れうる試みが、小・中学校でも成されていくようになる。さらに、山梨県巨摩中学校での教育課程づくりと教育実践も、民間教育研究運動に大きな影響を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の本田による、1970年代以降の教育科学研究会、数学教育協議会の文献調査はほぼ目途がついた。遅れている、1970、80年代当時の教育関係者のインタビューについては現在までで3分の1以上を終え、データの起こしも完了している。残りのインタビュー作業、データの起こし、分析についてはさらに急ぎたい。 共同研究者の吉村による「授業実践アーカイブ」の作成は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度中に完了できなかった作業を遂行する。インタビュー調査に関しては、今年(平成30年)の夏までに、データの起こし(文書化)も含めて完成する。そのうえで、インタビュー、フィールドワーク調査をもとに、本研究で明らかになった知見をまとめ、学会ほかでの報告、および学会紀要ほかでの論稿として公表していく。年度末までに、主なインタビューデータを資料として含めた成果報告書を刊行する。さらに、本研究で収集した授業実践の一次資料を整理し、公開可能なかたちにする。
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Causes of Carryover |
本研究は平成29年度をもって事業期間終了となるが、研究代表者(本田)が平成28年に休職したため次年度使用額が生じ、事業延長申請を行った。本来平成29年度中に完成するはずであった研究と成果公表の作業を、平成30年度に進める。
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Research Products
(5 results)