2015 Fiscal Year Research-status Report
外国人児童生徒指導者の実践力育成を目指したケース教材の開発と試行
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15K04212
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
古川 敦子 群馬大学, 学内共同利用施設等, 講師 (80731801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 亜子 (田中亜子) 国士舘大学, 政経学部, 准教授 (10439276)
矢崎 満夫 静岡大学, 教育学部, 准教授 (50432191)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外国人児童生徒 / 日本語指導 / ケース教材 / 小中学校 / 教員研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外国人児童生徒教育に関して総合的な実践力を育成するためのケース教材の開発と試行を目指す。研究初年度である平成27年度は、外国人児童生徒の教育的課題を多角的に把握し、ケース教材の基礎的資料を作成するため、以下の調査を実施した。 (1)教員に対する調査の実施:外国人児童生徒への日本語・教科学習の指導、生活面・家庭背景に関する配慮、文化的多様性に起因する問題について質問紙調査を行い、教員が日々の指導で感じている課題と具体的な事例を収集した。群馬県伊勢崎市では教育委員会の協力を得て、市内小中学校の全教員を対象として質問紙調査を実施し、830人以上の回答を得た。また伊勢崎市内および近隣地域の学校を訪問し、教員に聞き取り調査も行った。 (2)指導補助者に対する質問紙調査の実施:学校内外で児童生徒の日本語・教科学習の支援を行っている指導補助者を対象に上記(1)と同内容の質問紙調査(多言語版調査用紙を作成)を行った。 (3)現地調査:外国人児童生徒の教育に先進的取り組みを行っている静岡県袋井市と福岡県福岡市の学校を訪問し、日本語指導の授業見学の他、外国人児童生徒受入れ体制、指導事例、教員研修について現地調査を行い、資料を収集した。また日本語指導担当教員に対し、聞き取り調査も実施した。 調査結果から、教員や指導者がどのような場面で困難を感じるか、保護者との関係構築で何が難しいか等の実態を把握できた。この調査結果をもとに事例を分析・検討し、異なる地域においても共通して生起しうる問題・必要となる支援という観点からケース教材の試案を作成した。さらに、小学校で日本語指導のボランティア経験を持つ大学生にも聞き取りを行い、その意見を反映させて、来日直後の日本語初期段階の児童とコミュニケーションを図るための多言語会話教材「はなしてみよう」を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画であるが、研究開始に先立って調査対象地域の日本語指導担当教員を中心とした研究班活動に携わっていたこと、学校関係者や研究協力者との関係性が構築できていたことから、教員対象のアンケート実施に多大な協力が得られ、当初の計画をはるかに超える回答数を得ることができた。また、福岡・静岡での現地調査から、地域の実情による問題の所在を明らかにする資料を入手できた。結果として、研究初年度に多くの事例が収集され、外国人児童生徒教育の実態が多角的、重層的に把握できたと考えられる。 また平成27年度は、小学校で日本語指導のボランティア活動を行う学生に対し、児童の事例をもとに討論をしながら学ぶケースメソッド授業を試みた。その授業を受けた学生へのインタビューの分析から、ケースを使った授業の有効性と課題を明らかにすることができた。 全体として初年度は予定どおり調査・研究を進めることができた。今後2年間でケース教材の作成・試用・検討を行い、成果を広く公表していく。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度までに作成されたケース教材の試案を指導者研修等で試用する。ケース教材について、研修の参加者の意見や外国人児童生徒の指導に携わる教員や指導者の意見を反映させて内容の検討・改善を重ね、ケース教材の充実を目指す。 27年度に実施した質問紙調査の結果は、学会、論文等で公表していく。 また、ケースメソッド教育に関する基礎的文献調査、他の自治体の外国人児童生徒受入れ状況・支援体制に関する現地調査も継続して行う予定である。
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Causes of Carryover |
質問紙調査の実施に際し、伊勢崎市教育委員会の他、複数の地域の学校関係者の協力により調査用紙の配布・回収の協力をいただいたため、調査実施にかかる費用が軽減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究2年目となる28年度は、研究代表者が所属機関を異動した(群馬県から大阪府へ)ため、調査対象地域への旅費が計画より多く必要になる。教員の研究班活動の参加、日本語指導者研修会、学会発表、現地調査の交通費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)