2016 Fiscal Year Research-status Report
学習者の言語活動を支える教師のインターベンションの効果に関する実践的・実証的研究
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15K04217
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大和 真希子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (60555879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松友 一雄 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (90324136)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 授業 / 教師のインターベンション / 学習者の意欲 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度に引き続き、小学校と中学校の授業観察を行い、教師のインターベンションの効果を豊富に抽出することができた。前年度は福井県内の学校をフィールドとしたが、本研究の目的を果たすためには、地域特性や学習者の状況が異なる環境での調査を実施する必要があると考え、大阪府での学校訪問、授業観察、カンファレンスを着手した。対象校は大阪府北部のA小学校・B小学校と、C中学校である。 これら3校には、学力向上に課題を抱えた学習者が多く在籍するため、かれらの学習に向かう「しんどさ」を克服するための教師の働きかけ、とりわけ授業での児童・生徒に対する介入が非常に重要となっている。A・B小学校では、とくに低学年において学習規律の獲得(姿勢の維持、音読の仕方、授業への参加意識等)を促す教師の介入の効果が抽出できた。同時に、家庭学習の機会の少なさを克服するための、語彙の習得や他者意識の醸成(他のメンバーの発話を聴きながら、高学年までに学習者が自分の意見をまとめ、伝える力を育成させる方略が、教師のインターベンションの効果として見出せた。中学校では、こうした小学校での取り組みを踏まえて、発話する生徒に論理性を意識させ、構文力の育成を目指す取り組みがなされている。 上記の授業観察、カンファレンス等で得た研究成果については、これまで福井県・石川県で集積してきた分析結果と比較しながら、共通性や相違点を明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には小学校を主なフィールドとして授業研究を行い、データ収集を行ってきたが、平成28年度においては中学校における教科指導の場面でも、教師のインターベンションのデータを豊富に収集することができた。上記でも述べたが、北陸圏内だけでなく関西圏内にフィールドを広げ、学力向上に課題を抱えた児童・生徒に対する教師の効果的なインターベンションを抽出することに成功した。 当初の研究計画に比べて対象校は少なくなったが、大阪府の3校を集中的に訪問することができ、対象となる授業を継続的に参観、分析することができた。また、福井県、石川県における教育環境や学校の状況と詳細に比較すべきデータが多く獲得できたことも平成28年度の大きな成果と言える。ただ、教師の勤務状況に配慮したため、教師へのインタービューを行う機会を何度か逸してしまったことも事実であり、インターベンションを行った教師自身の判断や認識などについては十分に明らかにできていない。これは、今後の重要な研究課題として克服すべきであり、データの集積と合わせて教師自身の認識に焦点化した分析を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、継続的に授業データの集積・分析を行いながら、平成29年度は、教師3名の協力を得た上で授業後のカンファレンスでインタビューを実施する予定である。インタビューの流れは次の3つである。①自身が行った授業に対する実感を率直に語ってもらう(うまくいったポイントはどこか、難しかったところはどこか等)②授業映像を共に閲覧しながら、特徴的なインターベンションに焦点を当て、学習課題や学習のゴールとの関係や、なぜこうした介入を行ったのか、その時どのような判断をしたのか等について聴き取る。③本研究実施者より、具体的なアドバイスを行う。なお、授業前にはあらかじめ対象となる教師が有する「授業観」(授業をどのように捉えているか)、「学習者観」(児童・生徒の姿をどのように捉えているか)、「学力観」(児童・生徒のもつ学力をどの程度把握しているか、どの程度、向上の可能性があり、どうすれば向上すると考えているのか)を聞き取っておく。 こうしたインタビューを経て、後日、対象教師の授業を観察し、インターベンションを含めたその教師の働きかけの変容や改善された点を詳細に記録したい。 上述した研究計画のもと、平成29年度に果たしたい目的は次の3つである。 1.教師がこれまでの経験の中で培ってきた授業、学習者、学力「観」とインターベンション行動の相関を明確にすること。2.授業中の教師の判断や認識とインターベンション行動のつながりを明確にすること。3.継続的なカンファレンスの効果を明らかにすること(授業中の介入の変容を通して)。これら3つを本研究の最終目標に据え、日々の授業を行う教師たちに還元できる成果を提示したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画と異なり、授業データの整理やフィールドノーツの整理、授業映像からプロトコル作成に従事してもらうアルバイトを依頼しておらず、人件費が未使用であるため。また、学会発表の機会も一度のみになり、学校訪問の回数も当初の計画よりもやや少なくなってしまった。結果として、旅費の支出についても次年度の使用額が生じた次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、①これまで集積してきた授業データの整理、②フィールノーツのデータ化・整理、③授業映像からプロトコルあるいはプロセス・レコードを作成に従事してもらうアルバイトを、3名に依頼する予定である。よって、人件費は計画通りに支出可能と考えている。また、学会発表だけでなく、他大学での資料収集、教育実習生に対するインタビュー調査の実施、さらには、他大学の附属学校での授業観察・データの集積を計画している。平成29年度は、こうした研究調査に要する旅費が発生する見込みである。
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