2015 Fiscal Year Research-status Report
学習アーキテクチャとしての「記憶空間」の形成原理および問題改善の研究
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15K04226
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山名 淳 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80240050)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学習 / アーキテクチャ / 記憶空間 / 想起文化 / 教育 / 災害 / カタストロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の目的として、大きく二つのことが挙げられる。第一に、「記憶空間」と学習に関する最先端の理論状況を把握することである。第二に、そのような基礎的調査をもとにして、日本における「記憶空間」に関する研究活動を戦争と災害の両テーマを中心として活性化することである。この二つの目的を達成するために、まずは予備調査として、当該のテーマに関する主要文献をレビューし、その内容を検討した。そのことによって、本研究の理論的枠組みを定めた。それに続いて、2015年9月26日(京都)、2015年10月9日(奈良)、2016年2月14日(大阪)の3度にわたって、国内連携研究者と研究会を開催し、相互の情報交換および具体的なテーマに関する考察を行った。とりわけ9月の研究会では、来日中であったローター・ヴィガー教授(ドルトムント工科大学・教育哲学)が報告「カタストロフィーとビルドング」を行い、日独比較研究への足がかりを得られた。 以上のような初年度の研究活動をもとにして、2016年3月15日にカッセル大学(ドイツ)で開催されたドイツ教育学会におけるシンポジウムで、山名は報告"Stadt Hiroshima als architektonischer Raum der Erinnerung: Zur Problematik der Paedagogisierung des geschichtlichen Ortes"を行った。同大会開催中に、連携研究者のドイツ教育学者たちと、「記憶空間」と教育に関する研究動向について情報交換を行い、さらなる共同研究活動について協議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の連携研究者と年2回の研究会を開催することを予定していたが、ローター・ヴィガー教授の特別報告の機会を得ることができ、開催は3回となった。ヴィガー教授の報告および共同研究活動を通じて、日独比較研究にむけた調査が活性化された。日本の連携研究者とも、研究会およびメールなどの活用を通じて理論的考察を予定以上に勧めることができた。その成果の一部は、2016年3月のドイツ教育学会におけるシンポジウム報告として結実した。ドイツを事例とした調査については予定より遅れているので、今年度はこの点で研究を進展させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度の研究蓄積にもとづいて、研究協力者との連携のもとに論集『災害と災厄の記憶を伝える』(勁草書房)を刊行し、本科研における前半の成果を公にすることを予定している。本年度の前半は、そのための研究討議および論集内容の検討が中心となる。後半では、ドイツの事例に関する調査を中心に進めていく予定である。年2回の研究会を連携研究者とともに開催する他、国内の教育学関連の学会において、本科研の成果に基づくラウンド・テーブルの開催も企画したい。
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