2016 Fiscal Year Research-status Report
イギリスにおける形成的評価論の新たな展開に関する研究
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15K04230
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
二宮 衆一 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20398043)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習のための評価 / 形成的評価 / 教師による評価 / 信頼性と妥当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、4つの研究課題を設定している。2016年度は、その中の2つの課題についての研究を進め、その成果の一部を国際ジャーナルに発表することができた。 2016年度に取り組んだ1つめの課題は、社会構成主義の学習論にもとづいた形成的評価の理論的、実践的展開についての考察である。「classroom assessment」や「informal assessment」とも親和性を持つ、「学習のための評価」としての形成的評価は、教師と子どもの対話プロセスとして具現化されるものである。たとえば、Ruth DannやRoyce Sadler、Barbara Crossouardらは、子どもたちが具体的な学習成果物を媒介に教師との対話を通して、学習目標を独自に構成していくことの大切さを指摘し、そうした学習者の主体的で能動的な学習プロセスを支える活動として形成的評価の理論を探究している。そうした形成的評価の新しい動向を明らかにすることができた。 取り組んだ2つめの課題は、そうした理論的発展の中で進められてきた「teacher assessment(教師による評価)」の信頼性や妥当性の実証的、あるいはメタ分析的研究についてである。このテーマに関するブラックやウィリアムらの研究を整理する中で、「教師による評価」の信頼性が実証的に確かめられていることと同時に、形成的評価として行われる「教師による評価」の妥当性は、従来の総括的評価のそれとは異なる性質を持つということも明らかとなった。 以上の研究成果の一部について論文としてまとめ、教育評価の国際ジャーナルである『Assessment in Education』において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、昨年度のイギリスでの在外研究で収集した研究資料の分析を行うことで、「学習のための評価」として理論的に発展している形成的評価論が、従来の教育評価において重視されてきた妥当性や信頼性という概念においても新たな提起を行っていることなどが明らかとなっており、順調に研究を進めることができた。また、これまでの研究をまとめ、国際ジャーナルに投稿し、掲載できたことは本研究の大きな成果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、上記の2つの研究課題をさらに深めていき、特に「教師による評価」を柱とする「学習のための評価」としての形成的評価の理論的特徴を整理し、そうした教育評価機能の再考の動向について、研究成果としてまとめていきたい。そして、それらを学術論文として投稿していく予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度に予定していたイギリスでの資料収集およびフィールドワークが、共同研究を予定していたRuth博士の勤務先大学の異動により実施できなかった。次年度使用額として残っている助成金は、そうしたイギリスでの研究活動のための渡航・滞在費や備品購入費として考えていたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度予定していたイギリスでの研究活動については、2017年度に実施する目処がついており、そのための渡航・滞在費や研究に必要な備品購入費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)