2015 Fiscal Year Research-status Report
自閉症児の授業づくりにおける教育目標・教育評価に関する研究
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15K04231
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
三木 裕和 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80622513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川地 亜弥子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20411473)
寺川 志奈子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30249297)
山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
赤木 和重 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70402675)
國本 真吾 鳥取短期大学, 幼児教育保育学科, 准教授 (80353100)
越野 和之 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (90252824)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害児教育 / 教育目標 / 教育評価 / 発達障害 / 自閉症 / 社会性の障害 / 教育実践 / 個別の指導計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、以下の三点であった。1.自閉症児を中心とした発達障害児の教育実践における教育目標・教育評価の構造を明らかにする。「人と共鳴し共感すること」「創造的に考えること」の内容と方法に研究の視点を置く。2.社会性の障害に対して「社会適応的行動の獲得」だけでなく、社会性そのものの発達を教育目標として設定可能であるかどうかに研究の視点を置く。3.特別支援学校における個別の教育支援計画、個別の指導計画、年間指導計画、成績表、通知表などを分析検討する。 この目的を達成するために、以下の共同研究を行った。1.第1回、2015年7月11日、12日。報告 内藤綾子(鳥取市子ども発達家庭支援センター)「絵本の読み聞かせから学ぶもの」、著作『障害のある子どもの教育目標・教育評価-重症児を中心に』合評会、報告「同書の成果と課題」河合隆平(金沢大学)、報告 篠崎詩織(奈良教育大学附属小学校)「特別支援学級の授業づくりから(1)」、報告 大島悦子(大阪市立高倉小学校)「特別支援学級の授業づくりから(2)」。上記報告に基づく討論。2.第2回 11/7(土)~8(日)「基調提案の骨子」越野和之(奈良教育大学)、「通常教育における教育的評価―障害がある子を含めたゆたかな学力保障を目指して」川地亜弥子(神戸大学)、報告「教育実践と目標・評価(1)」石田誠(京都府立与謝の海支援学校)、「教育実践と目標・評価(2)」木澤愛子(滋賀県立甲良養護学校)、「子どもの「ねがい」-自閉症と自我」寺川志奈子(鳥取大学)。上記報告に基づく討論。3.第3回 公開研究会 12/12(土)鳥取大学地域学部5160教室、参加者:80名。 越野和之(奈良教育大学)、篠﨑詩織(奈良教育大学附属小学校)、岡野さえ子(山口県萩総合支援学校)、シンポジウム。これらのことにより、研究目的の1,2について、基本的視点が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、研究分担者の共同で研究会が順調に開催されており、報告、討論、まとめも予定したとおりに進んでいる。 特徴としては、第一に、研究者の専門性が生かされており、障害児教育学、障害児心理学、発達心理学、教育方法学など、それぞれの立場から積極的に報告が行われた。自閉症の教育目標が社会的行動の獲得のみに傾斜する現代にあって、児童生徒本人の立場を理解する上で、貴重な討論がなされた。 第二に、学校現場の実践家との共同研究が進んでいる。特別支援学校教員、特別支援学級教員の実践報告をもとに、その実践がどのような教育目標、教育評価を有しているかが継続的に討論された。児童生徒の情動的共感経験が大きな価値を有していることが推測された。 第三に、公開研究会を行い、研究成果を広く発信した。12月の公開研究会は80名の参加を得た。近畿、中国地方各地からの参加も多かった。自閉症児が文学作品にどのように接近し、理解し、表現するかという授業実践や、高等部段階で問題視されやすい性の課題を「社交ダンス」の実践で向き合った事例を通して、活発に議論が行われた。 当初計画していた研究会、公開研究会ともに順調に進んでいるほか、他の研究会においても課題研究としてこのテーマが取り上げられ、基調提案者、報告者として迎えられるなど、社会的認知も進んでいる。(2016年1月11日、全国障害児学級・学校学習交流集会、横浜市、発達保障研究集会、さいたま市) 以上のように、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
<成果> 特別支援学校教員の実践報告と、大学教員の研究報告を相互交流的に検討することで次のことが明らかになった。1、社会性の障害とされる自閉症児の授業づくりにおいて、物語や製作活動、性教育などで、知的活動を生かした創造的な実践が蓄えられていること。2 1と関連しつつ、情動の共有体験のもつ教育的価値に実践的な注目が集まっていること。 <今後の研究の推進方策>1.障害児教育実践における自閉症教育の特徴をさらに明らかにする。その際、特に、強度行動障害と呼ばれる事例について、教育目標・教育評価の観点から検討する。自傷、他害など、行動障害の実態は関係者にとって深刻な問題であるが、対症療法的実践に傾きやすく、児童生徒の内面を深く理解することなく進められることが多い。そういった実践の教育的背景、社会的背景を検討するとともに、あるべき実践について検討する。2.自閉症教育に関わって、個別の指導計画、指導案、指導要録、通知表など、教育目標・教育評価に関わる諸書類の実態を調査し、現代日本の障害児教育においてどのような傾向が見られるかを検討する。また、それを支える教育理念についても考察する。3.3年間の研究のまとめとして出版を計画しており、平成28年度は、出版物の構想、執筆者、執筆内容などの検討を始める。4.平成28年度は、27年度と同様に、3回の研究会を予定しており、その1回は公開研究会とする。公開研究会は神戸市で、12月に予定している。他の2回は鳥取大学を会場とし、7月、11月に開催予定である。
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Causes of Carryover |
物品費、旅費、人件費・謝金とも、ほぼ計画どおりに執行できた。一部、招聘旅費が年度当初の計画よりも高額に推移したため、年度後半に研究会招聘について抑制的に運営を行った結果、上記の差額が生じた。次年度に当たっては、計画を再考し、計画的な執行に当たる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画をおおむね実行する形で研究は進んでいるため、招聘旅費についての執行を拠り計画的に行うことで、適切な使用が可能である。
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Research Products
(4 results)