1920～30年代日本の学級経営における児童理解実践の位置―測定運動に着目して―

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K04232
• Research Institution: Tottori University
• Principal Investigator: 山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 教育評価 / 教育測定 / 学級経営 / 知能検査 / 学業成績 / 個性調査

Outline of Annual Research Achievements

本年度は，(1)大正期～昭和初年における測定運動による個性調査法の「科学化」とその教育実践への影響，とくに学級経営への影響について，前年度の理論的展開の側面に続いてその実践的展開の側面について検討すること，(2)大正期新教育のトレーガー達の学級経営の特質を，個性認識の方法との関係で検討することが課題であった。検討の結果以下の点が明らかになった。
まず(1)の課題については，①この時期，測定運動は，中等学校入試におけるメンタルテスト導入に大きな影響を与えたが，このことが小学校の教育実践には影響を与えていないこと，②算数，国語，修身などの各教科に渉る標準テストの開発や知能測定尺度の開発が，少なくない地域で，地方当局や師範学校の心理学教員を中心に行われたが，これが小学校における学業成績評価に実践的影響を与えるまでには至っていないこと，③個性調査に関しては，とくに特別学級に配する生徒を分類し，かつその個性を明確にするために，メンタルテストなどの新たな方法が採用されるに至っているが，通常学級における個性調査とこれに基づく学級経営には未だ大きな影響を与えるに至っていない，など。
次に(2)については，及川平治について，大正末期の欧米視察後の知能検査開発と児童の個別指導ではなく学級教授にこの知能検査による能力把握がどの様に利用されようとしたのかについて明らかにした。また，これと対照して，奈良女子高等師範学校の訓導山路兵一の学級経営を分析し，子どもの心理発達に学びながらも，教育実践における教育的働きかけの中から子どもの個性をつかみ出してくる方法の発生していることについても明らかにした。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

地方の測定運動の実践に関わる資料の収集に課題を残しているが，収集した資料の検討は予定通りに行っている。

Strategy for Future Research Activity

今年度十分といえなかった，地方における精神検査の開発，実施関係の資料を補充しつつ，予定通り，昭和2年の文部省訓令20号以降の個性調査と学級経営の本格的展開について検討を行っていく。