2017 Fiscal Year Research-status Report
15世紀イタリアにおけるギリシャ語教育の導入に関する教育思想史研究
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15K04244
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
加藤 守通 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (40214407)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クリソロラス / ギリシャ語教育 / ヴェルジェリオ / ブルーニ / サルターティ / ルネサンス / 中等教育 / ビザンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
古典ギリシャ語が西洋の中等教育カリキュラムに15世紀に導入されたという歴史的事件の思想的背景と状況を、引き続き調査した。従来、この事件については、フィレンツェの碩学サルターティとビザンチンの学者クリソロラスの関係に焦点が与えられてきた。しかし、ビザンチンとの関係において海洋大国ヴェネツィアが演じた役割は大きい。さらに視野を広げて見れば、シチリアと南イタリアは、ビザンチンによって再征服され、中世を通じても一定のギリシャ語文化が残っていたこともわかった。ギリシャ語文化圏は、イタリア半島においてさえ、一定の程度で残存していたのである。それにもかかわらず、中央・北部イタリアにおいては、ギリシャ語教育は中世において皆無に等しかった。14世紀を代表する文人たち、ペトラルカとボッカッチョもギリシャ語学習を志したが、成果を上げていない。それが、クリソロラスという教師を得た後、ギリシャ語教育は堰を切ったように14世紀末から15世紀前半にかけてイタリアからヨーロッパ全体へと拡散していったのである。本研究では、これまで、サルターティ、ブルーニ、グアリーノ、ヴェルジェリオといった人文主義者たちの言説を解読・翻訳する中で、ギリシャ語教育の拡散の背景にある、ギリシャの芸術・思想への憧れの高まりを調査した。また、それと呼応するかのように、トルコ人によるコンスタンティポリスの占領とビザンチン帝国の滅亡によるビザンチンの教養人たちのヨーロッパへのエクソドスにも注意してきた。具体的な成果としては、ヴェルジェリオの教育論「自由な青少年にふさわしい性格と学問について」を翻訳した。この翻訳は、バッティスタ・グアリーノの「教授と学習の順序について」の拙訳などとともに、東京大学出版会の「イタリア・ルネサンス叢書」の一冊として本来昨年度に刊行される予定であったが、刊行は次年度になる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定されていた研究成果の書物としての刊行が出版社の事情で延期されたことが、遅れた理由の一つである。 もう一つの理由は、クリソロラスの執筆したErotemataというギリシャ語教科書の翻訳はおろか、校訂されたテキストさえ存在しない中、クリソロラスに関する研究の進展が思ったほど進まなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度前半はミュンヘン大学にて研究を進める。そのため、クリソロラスを始めとした著作家たちの文献に接する機会が増えることになる。クリソロラスに関しては、彼が西洋のギリシャ語教育において画期的な位置を占めるに至った理由として、彼の教育方法の優秀さという観点から考察したい。それは、彼の著作Erotemataの教科書としての優秀さを突き止めることでもある。また、ミュンヘン滞在という地の利を生かし、ベルギー、イギリス、フランス、イタリアの図書館のみならず、イスタンブールへも調査のため赴く予定である。
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Causes of Carryover |
翌年度の4月から9月までミュンヘン大学にて研究を遂行することが決定し、ミュンヘンを拠点としてヨーロッパ諸国およびトルコに調査旅行をする必要が生じた。そのために、今年度の研究費をできるだけセーブし、残額を翌年度の調査研究に当てることにした。
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Research Products
(8 results)