2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the Imperial University,Agricultural College Based on Foreign Records & Archives
Project/Area Number |
15K04249
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
熊澤 恵里子 東京農業大学, その他部局等, 教授 (90328542)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 越境する科学 / 獣医学教育 / オックスフォード大学農学部 / スコットランド / 大学評議会 / 大学令案 / ワーリントン / キンチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究最終年度である平成29年度は、国内調査および夏春の国外調査(英・米・独)を実施し、その研究成果は大きく以下の5点にまとめられる。また、本研究成果の一部は「越境する科学―獣医学教師、英国からドイツへ―」と題して、『日独文化交流史研究』2017年度版(日独史学会)に掲載された。同内容は日本教育史学会例会(2018年2月)でも発表を行っている。 ①オックスフォード大学調査により、同大学農学部設置から廃止に至る経緯から、英国においても学力や学位、学理と実践のバランス等、帝国大学農科大学設置時に論争となったと同様の論点を抱えていたことが判明した。②大学評議会記録の調査により、1860年1月に大学評議会において「大学組織論」が議題に上がり、5月末から6月にかけ「大学令案」を3回にわたり評議し、6月に東京農林学校を帝国大学分科大学とする文部大臣諮問を評決したという流れが判明した。第3回目の大学令案の評議及び農科大学設置に関する文部大臣諮問の評決の際には浜尾専門学務局長が参席しているが、この2つの会議に連続性があるのかは不明である。③「農学部前身組織関係資料」の解読により、駒場農学校獣医学教師が英人からドイツ人にとって変わられた理由がスコットランド側の紹介によることが判明した。英国及びドイツの獣医学教育の調査により、ドイツではより臨床を重視した指導が行われていたことを確認した。④駒場農学校獣医学教師が英人からドイツ人へ変更した経緯を検討する過程で、日本における高等教育史研究がややもすれば国別研究一辺倒でありがちなことに疑問を投げかけ、国家横断的な研究の視点を提示した。⑤英国調査により、駒場農学校化学教師キンチの書簡3通を確認した。英国教師の地位がドイツ人教師に移っていく中での「寂しい」想いと明治政府の契約書以上の教育要求への不満がキンチを帰国へと急がせたと推測できる。
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Remarks |
東京農業大学農学研究科環境共生学専攻/東京農業大学教職・学術情報課程 教育学研究室・熊澤恵里子 http://dbs.nodai.ac.jp/view?l=ja&u=76
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