2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後教育改革期の社会科における道徳的「学力」の測定・評価に関する研究
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15K04272
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Research Institution | Chikushi Jogakuen University |
Principal Investigator |
松本 和寿 筑紫女学園大学, 人間科学部, 教授 (50613824)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本教育史 / 戦後教育改革 / 社会科教育 / 道徳教育 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、戦後教育改革期の社会科の学力観及び社会科教育における道徳的「学力」観を明らかにすることを試みた。 前者については、先行研究の整理と分析をすることが研究の中心であったが、後者については、研究費を用いた調査活動(国研や国会図書館等での調査を中心とした行政文書や雑誌記事、図書の蒐集)が進捗し、研究の目的達成に必要な史資料を得ることができた。 それらを分析することにより、2015.9.26・27日に宮城教育大学で実施された教育史学会で「戦後教育改革期の社会科における道徳的「学力」の測定・評価に関する研究」~「全国小・中学校児童生徒学力水準調査」を手がかりとして~と題し研究発表を行った。また、その質疑応答を通して得た検討課題も踏まえ、2015.12.5・6に名桜大学で実施された九州教育学会で(主題同じ)~「全国小・中学校児童生徒学力水準調査」に関わる地方教育委員会の動きを中心に~と題し発表した。 教育史学会の発表は、本研究の中心的分析対象である「全国小中学校児童生徒学力水準調査」実施に係る文部省や国研の動きや予備調査を含めた調査の全体像の解明、そこに見て取れる道徳的「学力」観を明らかにしたものである。九州教育学会の発表は教育史学会の発表に続けて地方教育委員会が児童生徒の道徳的「学力」をどのように測ろうとしたかを明らかにしたものである。いずれの発表においても、参会者からは本研究の意義及び独自性を認め、今後の研究の進展に期待する声が聞かれた。 なお発表内容はそれぞれの学会に査読論文として投稿し現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に示した研究計画では、平成27年度は①戦後教育改革期の社会科の学力観及び社会科教育における道徳的「学力」観を明らかにする②「全国小・中学校児童生徒学力水準調査」(国)と「学力水準調査」(地方)の関係を明らかにすることを掲げた。 本報告「研究実績の概要」にも記したとおり、2回の学会発表と論文執筆により後者についてはその目的をほぼ達成した。①については先行研究の整理の段階であり、当初の目論見よりやや遅滞しているが、②に取り組む中で、研究計画において平成28年度に着手するとした「全国小・中学校児童生徒学力水準調査」(国)、「学力水準調査」(地方)の実施による教育現場の実践の変容及び実践上の課題ついての検討に関係する、地方教育委員会や民間出版社発行が発行した教育雑誌の記事、国立教育研究所の会議記録等を発掘することができた。また、本研究の中心的対象である「全国小・中学校学力水準調査」(国)「学力水準調査」(地方)以外にも、日本教育学会による「義務教育修了時における学力調査」や各都道府県による「中学校学力検査」など同時期に行われた学力調査に関する資料を得ることができた。 このように、平成28年度の研究に係る基礎的資料の一部を平成27年度中に得ることができたことや、本研究の目的を達するために必要な研究対象に関する資料を得ることができたことなどにより、本研究は研究計画に即しておおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画のとおり「全国小・中学校児童生徒学力水準調査」(国)、「学力水準調査」(地方)の実施による教育現場の実践の変容及び実践上の課題ついての検討に取り組む。ただし、この解明は、平成27年度の研究内容と密接に関連するため引き続き上記調査の背景や実施の具体等について研究対象としていく。 また、平成27年度の研究を通じて検討の必要性が明らかになった日本教育学会による「義務教育修了時における学力調査」及び各都道府県が実施した「中学校学力検査」についての検討も行う。その際、前者については特にその実施の背景となったと考えられる戦後教育改革期の学力低下論争について検討すること、後者については、都道府県によって教科別問題や総合問題といった出題形式の違いが見られることについて検討する。「中学校学力検査」は、高等学校入学試験と関連していることもあり、出題形式の違いには当時の学力観の影響の度合いや前者で検討する学力低下論争の影響もあると考えられる。そのような中で、教科別問題、総合問題を問わず社会科における態度に関する内容がどのように問題化され、「学力」として取り扱われていくのか明らかにしたい。 なお、このことは平成27年度の研究でやや進捗が遅れた、戦後教育改革期の社会科の学力観及び社会科教育における道徳的「学力」観を明らかにすること、とりわけ戦後教育改革期の社会科の学力観と密接に関連するため、平成28年度の研究を進めることにより研究開始からの全体としての進捗状況は研究計画に即したものになると考える。
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Causes of Carryover |
平成27年度経費のうち、旅費に関する経費は調査旅費について予定した件数を下回ったためである。これは、実施した調査により当面の資料収集の目的を達したことと、目的地及び宿泊日数の関係で予定よりも予算を要せず実施できたことによる。 また、物品費については古書購入が予定よりも廉価でできたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は調査旅費及び物品費(古書購入)について、予定どおり支出する予定である。また、調査旅費については目的地が遠隔地になる場合もあり、予算を超過することも考えられる。その場合は平成27年度予算未使用分をこれに充てる計画である。
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