2015 Fiscal Year Research-status Report
欧米大学間における女性の教育研究交流に関する歴史的研究
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15K04273
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
香川 せつ子 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00185711)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トランスナショナル / 女性 / イギリス / ジェンダー / 教育史 / 国際交流 / 女性大学人国際連盟 / 津田塾大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀末から20世紀初頭における英米大学間の女性の教育研究交流の実態を明らかにすることにより、ジェンダーと国際化という新たな視点からイギリス大学史にアプローチしようとするものである。本研究がとくに着目するのは、女性の高等教育の草創期に女子学生や女性研究者の国境を超えた移動が始まり、20世紀初頭には女性の大学人による国際的組織が結成されていたことである。学問や教育を媒介とした女性たちのトランスナショナルな活動は、各国での女性の高等教育推進の原動力となったばかりか、西洋と東洋文化の衝突や宥和をもたらし、さらには国際平和運動として世界に波及した。 平成27年度は、トランスナショナルな視点からの女性教育史研究の枠組みと論点や課題を明確化することを目的に、本領域における研究の第一人者であるジョイス・グッドマン氏(イギリス、ウィンチェスター大学名誉教授)をイギリスから招聘することとした。4月より関心を同じくする若手研究者と連携して準備にあたり、平成28年2月20日に京都大学で、2月23日に青山学院大学で、二度にわたる公開シンポジウムを開催した。 グッドマン氏による基調講演は、イギリスの女性教育の思想とシステムが、女性校長協会や女性大学人国際連盟を通してアジア太平洋地域や日本に受容された歴史的過程の考察と同時に、トランスナショナルな研究アプローチの方法論的検討とを含む示唆に富んだ内容であり、コメンテーター及び参加者間の論議が沸騰した。英米日の大学をつなぐ重要な拠点がアメリカ合衆国のブリンマー大学であり、イギリスのケンブリッジ大学や津田塾大学等戦前期日本の女子高等教育機関とを結ぶネットワークが可視化された。またグッドマン氏の滞在中に津田塾大学や日本YWCA本部において共同調査を実施し、日英の研究者間におけるトランスナショナルな共同研究を継続的に推進することで合意した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリス女性教育史研究の第一人者であり、イギリス教育史学会の前会長でもあるジョイス・グッドマン氏を招聘し、トランスナショナルな女性教育史研究に関する公開シンポジウムを開催するとともに、津田塾大学と日本YWCA本部で共同の調査を実施できたことが、本年度の最大の成果であった。本研究課題において、これら一連の活動は次の三点で有益といえる。第一に、20世紀初頭の英米国家間、大学間の学術文化交流のダイナミズムを理解するうえで、ジェンダーと国際化という切り口の有効性を確認できたこと、第二に、トランスナショナルな研究アプローチについて多面的な理解を得たこと。第三に、西洋と東洋の学術文化の接点として、日本、アメリカ、イギリスの三国を結ぶ女性大学人の存在が重要であることが明確となったことである。 本年度はグッドマン氏招聘のための準備と研究セミナーの開催、共同調査活動に多くの時間と経費を割いたため、当初計画していたアメリカ合衆国ブリンマー大学での調査は平成28年度に延期せざるをえなくなった。しかし、グッドマン氏はブリンマー大学の顧問を兼任しており、同大学の所蔵する資料に精通している。今回、グッドマン氏との研究交流を通して、資料に関する情報や研究上の助言を得ることができ、アメリカ合衆国での調査の実施にむけての見通しが開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降の最大の目標は、本年度のシンポジウムと共同調査の成果をふまえて、日英米の女性教育史研究者のネットワークを構築し、国際的な研究交流を継続することである。こうした展望のもとで、平成28年度には、アメリカ合衆国ブリンマー大学での調査を実施したい。ブリンマー大学は、ケンブリッジ大学ガ―トン・カレッジで数学を専攻したC.スコット等を教育研究スタッフに招き、高度な学問教育を展開した女子高等教育のメッカであり、19世紀末から20世紀初頭にかけて津田梅子と津田塾卒業生の留学受入先となった。ブリンマー大学での調査を通して、日米英間の女性高等教育推進のメカニズム、背後にある人的ネットワークや財政事情、留学生の帰国後のキャリア等を解明することで、トランスナショナルな女性教育史研究にむけての一歩を踏み出したいと考える。そのために、これまでの研究成果を学会等で積極的に報告し、関連分野の研究者からの批判と助言を仰ぎたい。 平成29年度は、イギリスのケンブリッジ大学に赴き、ガートンとニューナムという二つの女子カレッジでのアーカイブ調査を実施する。それによって不足する資料を補完し、最終的な成果を研究論文としてまとめたい。
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Research Products
(5 results)