2015 Fiscal Year Research-status Report
戦時下における小学校児童の結核病、寄生虫病、眼病対策
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15K04274
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Research Institution | Nayoro City University Junior College |
Principal Investigator |
三井 登 名寄市立大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50455002)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学校衛生 / 結核対策 / 労務動員 / 健兵健民政策 / 国民学校 / 身体検査 / BCG / ツベルクリン反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、戦時下に於ける労務動員を目的とした国民学校修了後就職予定児童に対する結核対策に関する資料収集を行い、対策の基礎的解明を進めた。主な調査先は、国立国会図書館、国立公文書館、北海道大学附属図書館、北海道大学医学部附属図書館であった。調査は、学校が、労務動員政策の一環で健康な若年労働力の供出という役割を担った点に着目し、学校を介した結核対策の具体像が明らかになるような資料を中心に収集した。収集した資料を基に、特に、1942年度に国民学校修了後就職予定児童でツベルクリン反応陰性者(希望者のみ)に対して実施したBCG接種の導入期と、1943年度に同就職予定児童でツベルクリン反応陰性者全員に対してBCG接種を拡大した時期について、厚生省と文部省による検査の目的と方法に関する指示の詳細について明らかにした。当時、医学・医療関係者にとって児童の結核対策は解決すべき主要な課題として位置づいていたことに関しても収集資料によってあとづけた。国の結核予防対策の展開と共に発見される結核罹患者の対策問題や、結核罹患者の就職問題に対する課題も、当時著名な医学関係者らによって指摘されていた資料なども収集することができた。資料にもとづいて明らかになったことは次の通りである。労務動員政策の下、軍需産業を支えた国民学校新規卒業者は、就職指導による身体検査によって結核罹患状態が検査され、罹患児童は就職不適とされた。健康な労働力確保を目指した当時必要とされた結核対策だが、導入と共に問題となったのは、医学者である丸山博が指摘した、就職を目前に控えた児童にとって不適と診断された際の卒業後の生活展望だった。結核予防体系が確立される一方で、その診断によって発見された結核罹患児童の対策までは整備されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結核対策関連資料の収集は順調に進んでいる。さらなる関連資料の調査収集整理により、児童に対する戦時下結核対策の具体像を解明するための論文作成の目途がたちつつある。また、次年度以降に計画している視力対策の関連資料も収集しはじめている。
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Strategy for Future Research Activity |
結核対策に関する資料を引き続き行うとともに、寄生虫対策と眼病・視力対策に関する資料収集を進めていくことになる。収集すべき資料は、主として厚生省、文部省、陸・海軍省などの行政文書を主軸として、医学・医療関係、学校関係等の資料収集を行う。現時点において研究を遂行しがたい問題は生じていない。
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Causes of Carryover |
文献複写費が当初予算より少額で済んだことと、研究成果投稿料の未消化による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献複写費については、次年度は本年度よりも増額して予算計上しているため、国立国会図書館、国立公文書館への調査のための国内旅費として使用する予定である。
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