2017 Fiscal Year Research-status Report
『性教育国際指針』をふまえた東アジアにおける性教育分析と包括的性教育の実践研究
Project/Area Number |
15K04281
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
田代 美江子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40297049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 大輔 埼玉大学, 教育機構, 准教授 (00468224)
艮 香織 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (10459224)
及川 英二郎 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80334457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セクシュアルライツ / 国際セクシュアリティ教育ガイダンス / 包括的性教育 / 性の多様性 / ジェンダー・セクシュアリティ平等 / 性教育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の第1は、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2009)を踏まえ、多様性を前提とするジェンダー平等の視点から、東アジア諸国における性教育の背景、その具体的内容および教材分析を行い、日本の性教育との比較分析を行うと同時に、アジアにおける性教育の特徴を明らかにすることである。第2に、東アジアにおける性教育の特徴と課題を踏まえ、子ども・若者の現実と要求に則した性教育実践の具体的課題と展望を明らかにすることである。 平成29年度においては、これまでの成果を公表することができた。第1は、本研究における性教育実践分析の基盤ともなっているユネスコ等による“International Technical Guidance on Sexuality Education”の翻訳『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』である。これによって、国際的な性教育のスタンダードを性教育実践に取り組む人々に知らせることができ、また、日本における性教育の課題を浮き彫りにできた。もう一つは、これまで収集した中国、韓国の性教育関連教科書の分析を進め、『教科書に見る世界の性教育』にその成果を発表した。ここでは、ヨーロッパやオーストラリア等における性教育教科書・実践との比較と日本の性教育の課題についての検討をおこなった。また、台湾での調査も実施し、そこでの実践や教材、性教育と性の多様性をめぐる社会状況の分析についてすすめつつある。 これと同時並行で進めている日本国内での中学校をフィールドとした実践研究は継続的に進めてきており、性教育課程の構成と授業内容のさらなる検討を行ってきた。これまでの協力者の他、新たに性教育に取り組み実践研究に協力してくれる養護教諭とのネットワークも構築することが出来た。これら教員との協力関係で得られた成果は、さまざまな方法で現場教員に還元している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度からの継続課題であった、本研究の要ともなるユネスコ等による“International Technical Guidance on Sexuality Education”の翻訳『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(明石書店、以下『ガイダンス』)の翻訳出版をすることができた。 また、これまで収集してきた中国、韓国のテキスト分析をすすめ、それぞれの国の教育行政、教科書制度を踏まえ、『ガイダンス』との関連で内容分析を行い、『教科書に見る世界の性教育』(かもがわ出版)を出版することができた。 当初の予定であった台湾調査にすべての研究分担者で行くことはできなかったが、特にセクシュアルマイノリティに関わる問題と性教育との関連でのフィールド調査を実施することはできた。 性教育実践研究は、特に国内における中学校での実践は、すでに6年目となり、授業協力者も広がり、順調に進んでいる。授業の記録、生徒の感想についての分析を更にすすめるための議論を進めており、海外との実践共有に向けてその成果をどのように形にするかの検討に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度においては、これまでの研究の進捗状況を踏まえ、次のような課題に取り組みたい。 第1に、残された課題として、台湾の性教育についての分析をすすめる。必要に応じて、前年度フィールド調査に参加できなかったメンバーも含め、再調査を実施する。第2に、中国における性教育調査として、北京師範大学の性教育研究グループと交流をする。これは、本研究に取り組む中で新たに生起した課題でもあるが、北京の性教育研究グループは、『ガイダンス』に基づいたテキストの作成、小学校での性教育実践、さらに、大学での性教育や教員研修の取り組みをしている。それらの取り組みについて、これまでの資料を分析したうえで、必要に応じてフィールド調査を実施する。第3に、これまで積み重ねてきた中学校の性教育実践のまとめをおこなう。これは、本研究における重要な位置を占めるものであり、特に実践の効果を明らかにするための指標をあらためて確認しながら、2019年度に開催予定のアジア性教育学術会議での報告を前提に、その成果をまとめる。 さらに、これまで継続してきた中学校の性教育実践を、授業案集の形にし、広く性教育実践に資する形にする。
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Causes of Carryover |
(理由)日程調整が困難であったため、台湾、中国へのフィールド調査にすべてのメンバーで行けなかったことにより、旅費として確保していた予算を支出できなかった、最も大きな原因である。
(使用計画)中国北京へのフィールド調査を実施する際の旅費として、研究協力者の旅費、通訳にかかる費用として使用する予定である。また、最終年度であるため、性教育実践集といった形での報告集の作成に支出する予定である。
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[Journal Article] School education and development of gender perspectives and sexuality in Japan,2017
Author(s)
Noriko Hshimoto , Kaori Ushitora, Mari Morioka, Terunori Motegi, Kazue Tanaka, Mieko Tashiro, Emiko Inoue, Hisao Ikeya, Hisashi Sekiguchi, Yoshimi Marui & Fumika Sawamura
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Journal Title
Sex education Sexuality, society and Learning
Volume: 17
Pages: 386-398
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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