2017 Fiscal Year Research-status Report
福祉国家型教育財政構想の制度化の歴史的展開と現代立憲主義による正当化に関する研究
Project/Area Number |
15K04285
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
世取山 洋介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90262419)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 新自由主義 / 教育人権 / 給付 / 規制 / 現物給付としての教育 / ゼロ・トレランス策 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新自由主義国家理論の解析に集中し、その成果を教育学会定期大会において企画されたシンポジウムにおいて口頭報告することができた。 解析の結果示しえたのは、新自由主義国家理論が経済的自由至上主義とでもいうべき性格を有し、経済的自由に対する精神的自由の優越性という現代立憲主義の基本的な考え方へのチャレンジを基点においていることである。この基点から、国家が規制または給付を行うときに持ち出すことのできる正当な理由を経済的自由の伸長に限定し、一方で独占資本の規制からの解放を説き、他方で、福祉のための再分配を否定するものとなっている。給付を構成する教育については、教育という給付の目的を人材養成に一元化し、給付の方式を現物給付から現金給付へと変更し、営利企業による給付も可能とすることにより、教育を市場化し、かつ、個人に給付されるべき教育の量を競争により決定するという方式がとられることになる。このため、新自由主義国家理論に基づく教育改革は、教育の目的を人格の全面的発達に置き、人格の全面的発達に必要とされる質と量の教育を国家が現物として給付するという体系をとる教育人権論とは真っ向から矛盾することになる。 以上の成果を学会にて報告したが、現在、論文化する作業を行っており、歴史比較という手法を用いて新自由主義国家理論の歴史的展開を明らかにするのと同時に、日本における新自由主義国家理論とそれに基づく教育改革の全体像を明らかにする予定である。 また、給付の目的に上述のような限定がかかることとの関係で、問題行動を起こす子どもへの対応が福祉的措置から懲罰的措置に移行することを論じ、さらに、その表現形態であるゼロ・トレランス策がどのように日本において展開しているのかを明らかにする論文を公刊した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ようやく新自由主義国家理論の全体像を明らかにすることができるようになったが、個別論点である教育財政に関しては制度論レベルでの対応はできているのだが、権利論としての検討ができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年の成果を論文化するとともに、まだ十分手を付けることのできていない教育財政の権利論に基づく構成についての研究を本格化させる予定である。
|
Research Products
(3 results)