2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける「研究公正システム」の構築と展開に関する思想的・制度的研究
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15K04288
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤井 基貴 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80512532)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 研究公正 / 研究倫理 / ドイツ / 研究倫理教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ドイツにおける科学技術行政体制や研究資金配分システムの最新動向に関する情報収集・分析を行った上で、1)ドイツにおける「研究公正システム」の特徴及び機能の検討、2)欧州圏におけるドイツ型システムの影響の考察及び国際比較、3)研究資金配分機関を中心として展開される「研究公正システム」のグローバル化への対応課題の解明、4)研究不正の防止に向けた教育活動に関する調査を進めることにある。最終年度となる2018年度においては主として3)および4)の課題に取り組んだ。3)については、委員をつとめた文部科学省の委託研究「「諸外国の研究公正の推進に関する調査・分析」委員会とも連携して、諸外国の取組状況について調査を遂行するとともに、専門家をまじえて検討を行った。4)については2018年8月に、ドイツでも先駆的な取組を進めるハンブルク大学高等教育センターを訪問して、若手研究者に対する「研究倫理教育プログラム」についてヒアリング調査を行った。あわせて、ボン大学においても学問法の専門家と面会し、近年の研究不正の事例について情報提供を受けると共に、法制度上の課題について議論を行った。また、JSPSボン研究連絡センターでは、ドイツを中心として近年の研究公正をめぐる欧州の取組状況について情報提供を受けた。加えて、研究倫理教育のプログラム構築の一環として、教材の検討及び開発を行い、その試行として大学や学校等において実践を重ねるとともに、指導法上の分析を行った。これらの成果については2月に静岡大学にて研究会を開催して報告・検討し、著書や論文等で公刊した。当初予定していた欧米圏の研究者へのヒアリング調査及び国際比較研究を遂行するための国際会議の開催については準備のための十分な時間がとれなかったため、科研費の延長を申請し、2019年度に実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
渡航期間内において欧米圏の研究者へのヒアリング調査が十分に行うことができなかったため、科研費の延長を申請した。ヒアリング調査については2019年5月、6月に実施予定である。また、国際比較研究をのためのデータ分析も2019年度にあわせて行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においてはドイツを中心として欧州において整備が進められている研究公正システムの特徴と課題について分析を行った。その一方で、近年では予防教育や罰則強化が行き過ぎることで、先端的・革新的な研究活動への意欲や取組が阻害されることへの懸念も専門家から示され始めている。今後は、これまでの成果をふまえた上で、2014年より「責任ある研究とイノベーション」(Responsible Research and Innovation, 以下RRI)の両立を標榜する欧州の新たな取組の分析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
国際比較研究のため予定していたヒアリング調査及び国際会議の開催を相手方との日程調整によって2019年度実施に延期したため、そのための費用を繰り越している。
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