2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04289
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中嶋 哲彦 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40221444)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育委員会制度 / 規制改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方分権一括法制定以後における一連の教育改革を、政治・経済学的マクロな視点から国の構造改革戦略の一環に位置づけると、公教育の構造改革の推進には公立学校の設置・管理者である地方自治体をその推進にふさわしく改革することことが必要条件であることが浮かび上がる。地方分権改革の本質は、地方自治体を構造改革の推進を担いうる行政単位に変質させることにあった。つまり、規制改革と地方分権改革は日本における構造改革の両輪であり、地方分権改革は地方自治体及びその諸制度の構造改革を実行する政治権力を作り出すことを目的としていたと見るべきだろう。この観点からは、地方分権改革以後における地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一連の改正は、教育制度の構造改革を担いうる地方教育行政主体を生み出すことにあったと捉えられる。 この間政権が推進する規制改革・地方分権改革とは別に、文部科学省には中央官庁として自らが担ってきた教育制度またはそれに関する政策を維持しようとする志向するが見られ、政権が推進する上記の地方教育行政制度改革に対して一定の抵抗を試みている。地方教育行政の組織及び運営に関する法律の2014年改正が、政権が当初教育委員会制度を完全に廃止しようとしたにもかかわらず、教育長は首長によって任命されるものの、教育委員会が残されたことで首長からの独立性がかろうじて維持された。 上記法改正では首長の地方教育行政への介入または関与の制度的ルートとして総合教育会議と教育大綱が法定されたが、文部科学省の「新教育委員会制度への移行に関する調査」(2015年6月実施)からは、これらが構造改革の推進装置として機能しているとの結論は導き出しがたい。他方、小学校統廃合のよる公教育制度の構造改革は、文部科学省による学校配置基準の改定を梃子に推進されており、文部科学省自体が構造改革の推進主体となっていることも見落とせない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度は教育委員会に対するアンケート調査を予定していたが、文部科学省が「新教育委員会制度への移行に関する調査」(2015年6月実施)を実施したばかりであるため、回収率が低下する可能性が高いことを踏まえ、同調査の実施を2016年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 小学校の統廃合を実施した自治体における推進の経緯を調査する。 (2) 構造改革特区制度を利用して市町村費負担教職員制度を導入した自治体に着目して、その導入経緯と全国制度化後における実施状況を調査する。 (3) 教育の構造改革推進の仕組みを明らかにするため、他の行政領域を含めて構造改革の政治経済的本質に関する理解を深める必要があるので、他領域の研究成果を批判的に検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画では2015年度中にニュージーランドでの調査を計画していた。しかし、予定していた出張日程と所属機関において中心的に担っている業務の日程がバッティングしたため、調査日程の変更を訪問先との日程調整が不調に終わり、計画していた調査を2016年度以降に先送りにすることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
公教育領域における新自由主義的構造改革の推進状況に関する海外状況調査を2016年度中に実施する。
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Research Products
(4 results)