2015 Fiscal Year Research-status Report
市町村教育委員会の文化政策に関する研究―地域再生の可能性と今後の課題―
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15K04298
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河野 和清 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30116579)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化政策 / 首長部局 / 教育委員会 / 政策評価 / まちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、市町村教育委員会が地方文化の振興を通してまちづくり(地域再生)にどのように寄与しうるのか、その実態や意義や課題を、事例調査や面接調査や質問紙調査を行うことにより明らかにする。本研究の目的を達成するために、①文化政策がどのように立案され、実施されているか、その実態や過程を詳細に分析し、②政策実施の阻害要因や促進要因等を明らかにするとともに、③政策の定着度や政策実施の結果の分析(=政策の効果分析)並びに政策評価結果の政策立案への活用の実態等をも検討する。これらの検討を通して、教育委員会が地域文化の振興を通して「まちづくり」に寄与することの意義と課題を明らかにする。 そこで、初年度は、本研究の分析枠組みを決めるため、先ず、8市町村教育委員会と8首長部局及び5社会教育施設を対象に事例調査(面接調査)を行うことにより、地方自治体の文化政策がどのように展開されているか、その実態や政策効果等について検討した。具体的には、市町村教委や首長部局において、文化政策がどのように実施され、評価されているか、その技法や評価基準とともに、そこにどのような課題があるかを検討した。その結果、次の諸点が明らかにされた。①まちづくり(地域再生)のためには、先ずは自治体の歴史や伝統文化、人口動態及び産業構造等を十分に理解しておくことが大事であること(総合計画や教育推進基本計画の分析の必要性)、②多くの自治体がまちづくりの基本に地域の文化振興を据えていること、③文化政策を推進する上で、教育委員会と首長部局の連携協力が極めて重要であること、④首長部局が文化政策を進める上で、政治的中立性等の配慮も必要な場合があること、そして⑤行政、芸術文化団体、民間団体、企業、市民の連携が欠かせないことーなどである。今後は、事例調査の補充と文化政策をめぐる学校との関係の検討が必要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、本研究の分析枠組みを決めるため、先ず、8市町村教育委員会と8首長部局及び5社会教育施設を対象に事例調査(面接調査)を行うことを目的としていたが、事例調査が2箇所程度にとどまったため、次年度はさらに事例調査を行う必要がある。また、地域文化の推進を通して自治体のまちづくり(地域再生)を行うのに、学校教育の果たす役割も極めて大きいので、自治体の小学校や中学校でどのように地域文化に関連する教育が行われているか、その実態と阻害要因及び課題を明らかにすることが必要である。このため、2年目は、学校(校長や教員)に対する事例調査と質問紙調査を行う必要がある。また、文化政策めぐる諸外国の動向の把握もこの研究の内容を深めるうえで必要と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、必ずしも所定の計画通りに、事例研究が進まなかったので、2年目は最初にもう少し事例研究を行い、前年度に実施したこれらの事例調査の分析結果を踏まえ、全国の市町村教育委員会(教育長1700名)と首長部局(1700名首長)及び小学校(1700校)を対象とする「文化政策の実施状況に関する全国調査」(教育長用と首長用)を実施する【調査対象】全国市町村教育委員会教育長1700人及び全国首長1700人及び小学校(1700校) 【調査期間】2016年10月上旬~11月下旬 【調査手続】1.「文化施策の実施状況に関する全国調査」の調査項目の作成:この分析具(調査項目)の内容を精緻化するために、最近の国内外の文献が必要となる(文献購入費)。2.専門家と研究上の意見の交換をおこない、最終的に分析具を最終的に決定する。このため、研究打ち合わせ旅費(京都)が必要である。3.前段階で決定した分析具(アンケート用紙)を全国の市町村教育委員会と首長部局に郵送する。そのためアンケート用紙の印刷費、封筒代、官製葉書代(督促状)、切手代及びアンケート用紙郵送のためのアルバイト代(2名)が必要となる。4.アンケート用紙を回収し、調査結果について統計処理を施す。そのため、データ入力のためのアルバイト代(2名×3月)や文具類購入費及び計算機の使用料が必要となる。5.調査結果の解釈および報告書の作成:調査結果の解釈について、専門家(京都)から意見を聴取するため、研究打ち合わせ旅費や専門的知識提供のための謝金が必要となる。また、研究成果の中間報告を学会で行うため、旅費を必要とする。なお、諸外国の文化政策の動向と最新研究情報を入手するため、アメリカのコロンビア大学ティーチャーズカレッジを訪れるつもりである。 。
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Causes of Carryover |
初年度(27年度)は、8市町村教育委員会と8首長部局及び公民館など5社会教育機関を対象に事例調査(面接調査)を行い、教育委員会を中心とした地方自治体で文化政策がどのように実施され、評価されているか、その実態と課題を明らかにすることであったが、事例調査が2カ所に限られたため、予算が十分に執行できず、また研究面でも実態の把握と課題の掘り下げが不十分となった。 このため、本年度(28年度)は、やり残しの事例調査を実施したうえで、教育委員会や首長部局及び学校等に対する質問紙調査を行うことが求められる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①【調査対象】全国市町村教育委員会教育長700人及び全国首長700人及び校長700人、②調査期間】2016年8月上旬~12月下旬、③【調査手続】1.「文化施策の実施状況に関する全国調査」の調査項目の作成:この分析具(調査項目)の内容を精緻化するために、最近の国内外の文献が必要となる(文献購入費及び海外(アメリカ)での文献収集旅費)。2.専門家と研究上の意見の交換をおこない、最終的に分析具を最終的に決定する(研究打ち合わせ旅費)。3.前段階で決定した分析具(アンケート用紙)を全国の市町村教育委員会と首長部局に郵送する(印刷費、封筒代、官製葉書代、質問紙郵送の補助のためのアルバイト代)。4.調査結果の統計処理を施す(計算機使用料)。5.報告書の作成のための印刷費等が必要となる。また、研究成果の中間報告を学会で行うため、旅費を必要とする。
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