2017 Fiscal Year Research-status Report
「効果のある学校づくり」を促進する教育改善プログラムの開発的研究
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15K04301
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
久我 直人 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (20452659)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子どもの意識と行動の構造 / 効果のある指導 / 学校組織マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
「子どもの意識と行動の構造」の可視化とそれに基づく「効果のある指導」の抽出を進めた。特に,研究実践校の小学生(2校),中学生(3校),高校生(2校)の意識と行動の構造を共分散構造分析ソフト(Amos.ver23)を活用して可視化した。さらに,それぞれの学校の子どもの意識と行動の構造に適合した「効果のある指導」を抽出した(指導論)。 また,この「効果のある指導」を組織的に展開するために学校組織マネジメントの理論に基づく「教師の主体的統合モデル」(久我,2013)を援用して,全教職員による組織的省察を行った。具体的には,実践研究校の子どもの意識と行動の構造図を提示し,全教職員による組織的省察を通して,各校の「効果のある指導」を組織的に設定した(組織論)。 これら指導論と組織論の融合モデルである「教育改善プログラム」を構築し,その効果を検証した。結果,子どもの学びにおける主体性と生活における規範意識の向上が一定程度確認された。一方,教職員の協働意識の向上も一定程度確認された。また,小学校においては,保護者の学校認知の肯定的な評価の高まりが確認された。 特に,組織的な勇気づけの言葉掛け(ボイスシャワー)を通して,子どもの「自分への信頼」を高めたことが,学びへの意欲や生活の安定(規範意識の醸成)に効果的に機能することがとらえられた。このことが教職員の指導観を「統制型」から「勇気づけ型」へ転換させ,教育の良質化が進められたことが教職員アンケートから捉えられた。また,教職員の組織化において,組織的省察を通して,自校の子どもが抱える教育課題を共有することにより,協働意識を高めることが確認された。 このように本プログラムの効果性が,子どもの意識と行動の変容と教職員の意識と行動の変容にかかるデータに基づいて,エビデンスベースで一定程度検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践研究校(小学校(2校),中学校(3校),高等学校(2校))において,学校アセスメントデータに基づいて各校の子どもの意識と行動の構造の可視化を進めた。この「子どもの意識と行動の構造」に適合させた「効果のある指導」を各校の実態に応じて抽出し仮説的に設定した。 設定した「効果のある指導」を組織的な展開とするために学校組織マネジメントの理論を援用した「教育改善プログラム」を構築し,実践研究校において展開した。 本プログラムを小学校,中学校,高等学校という異なる校種へ,また,実態の異なる学校(例えば生徒指導困難な学校,生徒指導上安定した学校等)へ導入し,その効果を検証した。 結果,校種,学校の実態にかかわらず一定程度の効果が確認された。小学校においては,保護者の肯定的な学校認知の向上も一定程度確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実践研究の蓄積から,開発した「教育改善プログラム」の効果が校種を超え,学校規模や特徴を超えて,一定程度確認された。さらに本プログラムの汎用可能性と再現性(科学性)を高めるために実践理論の精緻化に取り組む。 ①さらに実態の異なる学校に本プログラムを導入し,その効果を検証し,課題を抽出する。 ②小学校,中学校,高等学校の子どもの発達段階と「効果のある指導」の特徴の傾向を可視化する。 また,「効果のある指導」の組織的展開を通して,教職員の指導の質的転換が確認されてきた。本プログラムの導入による教職員の指導の良質化の可能性の検証をさらに進める。 これら実践研究の蓄積により指導論(「効果のある指導」)と,組織論(「教師の主体的統合モデル」)の精緻化を図り,本プログラムの効果性と再現性(科学性)の向上を進める。
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