2016 Fiscal Year Research-status Report
小学校への移行期における「学び」を評価する実践ツールの開発に関する研究
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15K04308
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大野 歩 大分大学, 教育学部, 准教授 (60610912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七木田 敦 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60252821)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保育評価 / 幼児期の学び / 保幼小接続 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、スウェーデンにおける「ペダゴジカル・ドキュメンテーション(教育学的実践記録)」という保育評価を調査・研究し、わが国における幼児期の教育から小学校教育への「学び」の移行のために、保育者の実践評価ツールの作成を目指すものである。H28年度における研究実績は、次のとおりである。 ① 保育者研修の実施と保育者へのアンケート調査:大分大学で開催した保育者を対象とする免許更新講習にて、ペダゴジカル・ドキュメンテーションを踏まえた保育評価の実践に関する講義とワークショップを行った。研修後は、保育者へ幼児期の学びに関するアンケート調査を行った。 ② 研究成果の発表:H28年度日本保育学会全国大会(2016年5月7-8日於:東京学芸大学)において、「スウェーデンにおける幼児期の自然科学プログラムの導入について」というタイトルで口頭発表を行った。また、大分大学教育学部研究紀要第38巻第2号へ『スウェーデンの就学前教育における科学的リテラシー能力の育成に関する研究―2011年教育改革後における保育実践の検討から―』を投稿、掲載された。さらに、これまでの研究成果をまとめた『スウェーデンにおける「保育の学校化」に関する研究』というタイトルで学位論文を提出し、広島大学大学院教育学研究科より博士号を授与された。この中では、スウェーデンの保育政策の分析、保育改革の動向を踏まえ、実践における「ペダゴジカル・ドキュメンテーション」の位置づけをスウェーデンの文脈に沿って解釈し、スウェーデンの保育が現在語られている保育の二元論(就学準備型/生活基盤型)の枠組みを乗り越えた「生涯学習型」という新たなパラダイムに基づいて実践していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 実践現場への研究成果の還元:昨年度までの研究成果を保育者研修へ反映することにより、平成30年度の幼稚園教育要領の全面実施に向けたこれからの日本における幼児期の学びに対する視座を、実践現場へ提供することにつながった。また、研修を通じて保育者の声を聴くことで、実践現場における保育評価への難しさや学びのとらえ方への戸惑いを知ることができ、今後の研究の推進への大きな手掛かりをつかむことができた。 ② 研究成果の発表:学会における口頭発表では、H30年度からの幼稚園教育要領の改訂における本格実施を見据えた内容を提示することができ、日本の保育・幼児教育学における実践へ成果を還元することができた。また、学部紀要への論文投稿・掲載、学位論文の作成・受理によって、保育・幼児教育学のみならず広く教育学全般へ、本研究のこれまでの成果を発表することができた。これら論文は、インターネットで公表されているため、社会へ広く成果を公表することにつながった。 ③ 新たな保育類型の提示:学位論文の中では、スウェーデンの保育が、就学準備型と生活基盤型の二元論によって語られてきた保育の類型に対し、それらを脱却した新しい第3の保育の枠組みによって構築されていることを明らかにした。このような類型と提言は、まだなされておらず、本研究における大きな成果の一つであると考えられる。この新しい保育類型を研究期間の2年目で達成できたことは、最終年度の現地調査、成果報告のまとめに向け、大きな力となった。 ④ 最終年度における現地調査の計画:初年度に予定されていた現地調査について、テロ等の影響を受けて延期したため、最終年度に調査をすることで計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における今後の推進方策は次のとおりである。
① 現地調査(スウェーデン)の実施:現地の就学前学校と就学前クラスを訪問し、実践の観察および保育者へのインタビューを行う。具体的には、幼児期における子どもの学びをとらえる具体的な観点とその実践ツールの用い方を調査する。また、それら保育評価を幼児期から小学校教育へどのようにつなげているのかについて、明らかにする予定である。さらに、2011年にナショナルカリキュラムの大幅な改訂を行ったスウェーデンにおいて、その後の保育実践がどのように変容したのか否か、保育者は改訂された内容をどのようにとらえて実践に背泳させているのかについて、調査を行う。これらは、平成30年度における幼稚園教育要領の改訂とその全面実施に大きく寄与するものであると考えている。 ② 現地研究者との意見交換会の実施:現地にてヨーテボリ大学のニクラス・プラムリン博士と本研究の成果について意見交換会を実施し、スウェーデンの保育研究に対する助言を提供していただく予定である。 ③ 保育者研修の実施:免許更新講習、附属幼稚園における研修会に加え、大分市の公立保育所における保育者研修においても成果を還元した研修会を行う。これにより、大分県内における幼稚園、こども園、保育所に向けて、研究の成果を還元して、実践現場における保育の質の向上に努める。 ④ 研究成果の報告:学会発表および論文の投稿を継続して行う。日本保育学会、日本乳幼児教育学会を中心として、学会における発表や論文の投稿を通じ、研究成果の報告を重ねていく。これらにより、新しい保育のパラダイムを提示していくとともに、転換期を迎えている日本の保育・幼児教育にひとつの具体的な保育評価の方法を提示していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定としていたモバイルデータ通信機器について、本年度は研究協力者と直接会議を開会することができたため、次年度の方が必要になると考え、購入を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度においては、現地調査の計画・実施など、連絡を密にとる必要が生じるため、モバイルデータ通信機器を2台購入する。
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Research Products
(2 results)