2015 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な社会構築を担う学校モデルの探究-韓国農山村の小規模校存続事例に着目して
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15K04310
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
尾崎 公子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90331678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏子 和洋女子大学, その他部局等, 教授 (60165818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小規模校活性化政策 / 持続可能な社会 / 自律学校 / 住民自治 / 田園回帰 / 日韓比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
中山間地域における人口減少や地域の空洞化が進行し、学校統廃合がそれに追い打ちをかける状況にある。だが、「田園回帰」と呼ばれる現象も起きている。こうした流れを支援し、循環型の、持続可能な社会を構築するインフラとして学校を機能させていくには、どのような理念、仕組み、方法、組織が必要となるのか。本研究は、小規模校の再生に止まらず、学校と地域双方の革新を図る取組みを展開している韓国の小規模校存続事例に着目し、持続可能な社会構築を担う学校モデルを探究することを目的としている。 27年度における日本研究では、①中山間地域の人口社会増地域に関する資料収集及び先行研究のレビュー②中国地方の中山間地域における住民自治の先進事例分析を進めた。住民自治の仕組みを築き、経済、福祉等多様な活動を展開する先進事例が見いだされたが、住民自治が公教育のあり方にも生かされる仕組みにはなっていない。一方、韓国については、①「小さな学校連帯」に加盟している18小学校(2015年4月1日現在)の基本データの収集②「小さな学校連帯」を牽引してきた京畿道広州市の南漢山小学校、忠清南道牙山市の巨山小学校、全羅北道完州郡の三友小学校の事例分析③進歩教育監の小規模校活性化政策の把握に努めた。 これらの基礎的な作業を通して、小規模校存続の成功要因として、地域住民、保護者の積極的な学校運営の参加と教員の献身的な努力、そして三者の協働関係が実を結んだ教育プログラムを捉えることができた。今後の課題は、それらを可能にする組織体制の分析を進めることである。加盟校の基本データから、教職員数における事務職員数の占める割合が日本よりも高いことが明らかになった。そのため、事例分析をさらに深め、日本への示唆を得るべく韓国の自律学校政策(人事権・教育課程編成権・予算権の学校への権限委譲)が持つ小規模校対策の側面を検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、3カ年で循環型の、持続可能な社会を構築するインフラとして学校を機能させていくための理念、仕組み、方法、組織を探究することにある。そこで本研究では、2005年に結成された韓国の「小さな学校教育連帯」に着目している。同組織は、小さな学校を守るだけでなく、受験中心の競争的な公立学校をリモデルし、学校と地域双方の革新を目指す民間組織である。 27年度は、同組織の基礎的データを収集分析し、現地視察及び調査に入る準備作業を進めることができた。また、日本の「田園回帰」の現状、分散型地域社会を支えるシステムについての研究及び取組み状況の把握に努め、日韓比較を進めるための観点整理を進めることができた。さらに、日韓の共同研究者が情報を共有できるように入手した資料や執筆した報告書の翻訳作業を進め、共同研究を進める態勢を準備することができた。 以上の理由から「おおむね順調に進展している」との達成度評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、「小さな学校教育連盟」の事例研究を進める。 27年度の研究実績から、学校と地域双方の革新が図られている要因として学校の組織体制があることが示唆された。加盟校は自律学校もしくは革新学校指定校でもあるため、学校に一定の人事権・教育課程編成権・予算権が付与されている。加盟校の基本データから、教職員数における事務職員数の占める割合が日本よりも高いことが明らかになった。そのため、学校の組織体制における事務部門にも着目し、研究課題の学校モデルの探究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、体調不良により実地調査が行えず、旅費支出が発生しなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画については、体調が回復したので直接経費の繰越金の266521円のうち実地調査を行うための旅費に10万円、日韓の共同研究態勢を整えるための資料翻訳作業に係る人件費に160521円を充てる予定である。28年度分の使用計画は物品費50,000円、旅費700,000円、人件費・謝金560,521円、その他50,000円を予定している。
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Research Products
(3 results)