2016 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な社会構築を担う学校モデルの探究-韓国農山村の小規模校存続事例に着目して
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15K04310
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
尾崎 公子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90331678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏子 和洋女子大学, 生活科学系, 教授 (60165818)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小規模校対策 / 韓国 / 学校自治 / 革新学校 / 校長公募制 / 教員招聘制 / 学校会計制度 / 小さな学校教育連帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、持続可能な社会構築を担う学校モデルを探究することを目的とし、小規模校の再生に止まらず、学校と地域双方の革新を図る取組みを展開している韓国の小規模校存続事例に着目している。 韓国政府は小規模校の活性化策として学校自律化策を採用してきたが、本研究では、学校に付与された一定の人事権・教育課程編成権・予算権を駆使して、小さな学校の再生に取り組んできた、「小さな学校教育連帯」(以下連帯と略)の取組みに着目している。連帯は2005年に結成された民間組織で、小さな学校を守るだけではなく、受験中心の競争的な学校から子どもの学びと生活を基軸に据えた学校に再構造化し、革新を図ることを目指してきた。2014年の教育監選挙で政府の統廃合政策に反対する進歩的教育監が多く生まれたことによって、草の根的に取組まれてきた連帯の学校づくりが、「革新学校」として制度化され、全国的な広がりを見せている。 そこで、2016年度は、①連帯や「革新学校」の現況 ②学校自治の実際、を明らかにすることをねらいとして、連帯のモデル校である京畿道広州市にある南漢山小学校、同校を管轄している広州河南教育支援庁、連帯の主要メンバーへのインタビュー調査を実施した。 調査によって得られた知見は以下の通りである。革新学校の制度化によって、連帯の教育理念を実現させるための教職員配置や独自の予算措置が可能になっており、そうした学校自治を制度上支えているのが、学校会計制度、校長公募制・教員招聘制、そして学校運営委員会である。さらに、教職員組織は教員と行政職員の二元体制からなっており、それが学校の責任と権限において予算が執行できる学校会計制度を機能させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、3カ年で循環型の、持続可能な社会を構築するインフラとして学校を機能させていくための理念、仕組み、方法、組織を探究することにある。本研究では、韓国の「小さな学校教育連帯」に着目し、27年度は、同組織の基礎的データを収集分析し、現地視察及び調査に入る準備作業を進め、28年度は現地調査を実施することができた。韓国の小規模校の再生は、「学校自治」がキーワードであり、現地調査により、そのための仕組みや組織を具体的に把握することができた。 以上の理由から「おおむね順調に進展している」との達成度評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、持続可能な社会を構築するインフラとして学校を機能させていくための理念について分析を深めていくことにある。 連帯会長や南漢山小学校校長等のインタビュー調査から明らかになったのは、裁量権を活かしてどのような学校づくりをするのか、換言すれば制度の基軸になる教育理念・哲学が重要だということである。学校自治は、持続可能な社会を構築するインフラとして学校を機能させていくための一つ要件だと捉えることができるが、小規模性の背景にある地域問題と連動させつつ、いかなる教育理念・哲学を据えるのか。この点を革新のベルト化を図って、学校づくりからマウル(地域)づくりへと取組みを進めていくという連帯の動向にも注視しながら深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
国内調査に参加できない研究協力者がおり、予算として組んでいた旅費の支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の33,010円については、人件費・謝金に充てる予定である。具体的には、物品費50,000円、旅費500,000円、人件費・謝金433,010円、その他50,000円を予定している。
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Research Products
(3 results)