2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04315
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
坂野 慎二 玉川大学, 教育学部, 教授 (30235163)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学校評価 / キーコンピテンシー / 学校改善 / 教育の質保証 / 学校の自主性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と諸外国における新しい能力観に基づく学校教育の質保証という課題にどのように対応しうるのかというモデルを構築することを目的とする。PISA調査前後からの学校教育に対する諸要求の変化は、日本及びドイツ語圏のような「公」への依存度が強い国と、英米を中心とする「市場原理」型の国との対比において、多くの課題を生み出している。効率性を高めるためには、公教育行政の「多様化」を基盤とした「最低水準を質保証する多元型」モデルが日本にはより適したモデルであることを提示する。 予想される知見は以下の通りである。(1)就学前段階の子ども支援政策では、行政機関と外部機関が緩やかな連携による柔軟性が必要であること。(2)学校における学力向上には、教員と外部支援者の信頼関係を構築し、学習環境を整備する必要があること。(3)学校の授業改善において、児童生徒の多様性を取り込んだ授業方法の確立が必要であること。 平成27年度の研究を通して、ドイツではドイツ型NPM(Neue Steuerung)が進んでいることが、文献調査及び現地調査によって確認できた。つまり、出口管理についてのシステムが定着しつつあるということが確認できる。しかし、一方で、学校毎の多様性も確保されている。このことは、児童生徒の多様性に見合った教育手法が、行政サイドで一律に定められているのでは無く、各学校が選択しているということである。そのために教員の資質能力の向上が目指されており、教員養成段階及び現職研修についての重要性が認識されるようになってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.文献調査を基盤とした研究枠組みの補強。先行研究は、前述(1)の学力向上施策として、①学校の自助努力(教員の能力開発を含む)、②学校と行政機関、大学・企業の緩やかな連携による教育基盤整備、が重要であることを示してきた。ドイツ語圏諸国等でも、①に該当する学校自己評価、教員研修の重要性等が増している。しかし学校自己評価は進まず、学校外部評価による刺激が必要であった。平成27年度はドイツにおける学校外部評価を中心としたドイツ型NPM(Neue Steuerung)についての文献を収集し、その分析を行い、理論的枠組みの補強を行った。 2.外国における聞き取り・現地調査。研究初年度は、前述(1)の新しい能力向上政策及び(2)の就学期における学校以外の支援政策の調査を中心に実施する。ドイツ語圏では半日学校から終日学校へと学校の機能拡大が進められて、その結果が検証されつつある(Holtappels等)。終日学校導入によって、家庭状況等で不利益を受けている子ども達がどのような影響を受けているのかを、成功事例校を訪問調査し、分析する(ドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州等)。平成27年度は、ベルリン市、ケルン市を中心に学校訪問調査を行った。 3.文献調査と現地調査を総合し、研究枠組みに大きな修正は必要ないことが確認できた。学校毎に多様な実態に即した取り組みを実施していることが確認できた。ただし、学校における放課後を活用している事例(ドイツの終日学校)では、ドイツの個人情報保護法の規定によって、個別の事例を詳細に調査し、記載することは困難であることが判明した。従って、匿名を条件に協力を得られる範囲においてのみ、個別事例を報告書等に記載することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.文献調査を基盤とした研究枠組みの再構成 前述(2)の新しい能力向上施策として、授業方法の分析を行う。日本の初等教育段階における一斉教授型であると同時に全体での練り上げ型の授業スタイルは、ドイツ語圏初等教育段階の個別指導型(週案指導法Wochenplan等)、中等教育段階以降の議論型とは対照的である。初等教育段階では、個別学習指導法として、モンテッソーリ教育法やイエナプランがオランダやドイツで普及している。混合学年制によって、子ども間による学び合いを中心とする授業方法についての分析を行う。また、就学前教育段階における子ども支援の行政施策を整理する。また、ヨーロッパ諸国では、就学前教育と初等教育の一体化構想に基づく、能力観や学習指導内容についての研究開発が進んでいる。こうした内容についての先行研究を収集し、分析を行う。こうした作業を通じ、新しい能力観のモデルを構築する。
2.外国における聞き取り・現地調査 ドイツを中心としたヨーロッパ諸国における、NPM型の教育政策が学校に与えた影響及び新しい能力観がどの程度学校へと浸透しているのかを現地調査する。平成28年度は、ドイツを中心に調査する。
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Causes of Carryover |
玉川大学から平成28年度に在外研究の内示を受けた。このため研究計画を一部変更し、平成28年度に予定していたドイツ現地調査準備を平成27年度に繰り上げて実施する必要が生じた。そのために必要な平成27年度の研究費が不足していたため、平成28年度の決算とすることに計画を変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでにドイツ調査準備を平成28年2月に繰り上げて実施した。このため、研究遂行には大きな変化はなく、予算を執行することができる。
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