2015 Fiscal Year Research-status Report
博物館学芸員課程における学びの特徴と現代社会に対応した学芸員養成教育に関する研究
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15K04317
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
江水 是仁 東海大学, 課程資格教育センター, 講師 (40609351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 弘明 桜美林大学, 人文学系, 教授 (30348487)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 博物館 / 学芸員 / 学芸員養成課程 / 生涯学習 / 社会教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
学芸員養成課程での学びにはどのような特徴があるのかを明らかにするために、平成27年度は、①全国の大学の学芸員養成課程のシラバスに記載されている内容をインターネットを中心に収集し、学芸員養成課程のカリキュラムの特徴を整理・分析および学芸員養成課程担当教員へのアンケート調査を行い、②学芸員養成教育を通した学びの特徴を、学芸員課程を修了した学生へのアンケート調査を行った。 ①に関しては、平成27年度は学芸員養成課程を担当する教員の所属と、大学ごとの常勤教員と非常勤教員の割合を整理・分析した。その結果、博物館実習と博物館概論は、半数以上を専任の教員が占めたものの、それ以外の科目は非常勤の教員が担当している割合が半数以上を占めていた。非常勤の教員の所属は、現役の学芸員が約5割を占め、学芸員OB・OGや、学芸員課程が開講されていない他大学の教員が約1割であった。次に、学芸員養成課程を担当する非常勤教員の割合が半数を超えている大学は約6割を占め、8割を超えている大学が約2割、すべて非常勤教員が担当している大学も約3%あった。これらから、日本の学芸員養成教育は、学芸員養成を専門とする教員が関わるよりも、博物館の現場の学芸員が非常勤として大きくかかわっていることが確認される。学芸員養成課程を管轄する文部科学省では、最低でも一大学一名以上専任の教員を置くことが望ましい、と指導しているにも関わらず、博物館での現場実践のほうが、博物館学としての理論や体系的な知識よりも優先される傾向が見られる。なお、教員アンケート調査は、28名の回答があった。今後回答数は増えることから、ある程度まとまってから分析を予定している。 ②に関しては、平成28年3月31日現在、20大学から230名のアンケート調査の回答があった。現在表計算ソフトにアンケート記述内容を入力を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は3名で研究を進める予定であったが、文教大学の井上由佳氏が産休・育休の為、平成27年度は2名で研究を行った。 全国の大学の学芸員養成課程のシラバスに記載されている内容をインターネットを中心に収集し、学芸員養成課程のカリキュラムの特徴を整理・分析するためのデータ化はほぼ完了したので、平成28年度はその整理・分析を集中的に行う予定である。断片的ではあるが、整理・分析結果の一部を、平成28年度全日本博物館学会にて口頭発表する予定である。また、今年7月ミラノで開催される国際博物館会議(ICOM)において、その分析結果の一部を口頭発表する予定である。 当初、平成27年度では、博物館園実習生を受け入れる博物館園への聞き取り調査やアンケート調査を行う予定でいたが、各自治体内の博物館協会の大会開催時に参加する学芸員を対象としてアンケート調査を行うことが極めて効率的であることがわかったので、平成28年度に集中的に行うことに変更した。現在のところ、神奈川県博物館協会、岐阜県博物館協会、千葉県博物館協会、日本博物館協会において大会が開催されるときに、大会参加学芸員に向けてのアンケート調査を行い、アンケートの回答数を増やしていきたい。また、学芸員養成課程を担当する教員を対象としたアンケート調査も、6月に開かれる日本ミュージアム・マネージメント学会や全日本博物館学会といった学会に参加する学芸員養成課程を担当する教員に依頼したり、全国大学博物館学講座協議会全国大会、東日本大会、西日本大会に参加する教員にお願いすることで、アンケートの回答数を増やしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
産休・育休が終わり、復職された文教大学の井上由佳氏ととともに、平成28年度は研究成果を国内外の学会で発表し、かつ論文としてまとめていく作業を行う。また、全日本博物館学会が発行する博物館学雑誌や、日本ミュージアム・マネージメント学会が発行する日本ミュージアム・マネージメント学会研究紀要に、学芸員養成課程のカリキュラムの特徴を分析したものを論文として投稿を予定している。さらに、学芸員養成課程修了生からのアンケート調査の分析を進める。平成27年度中は、約200名のアンケート調査を回収することができた。研究分担者とともに分析結果から読み取れることを検証し、博物館学芸員課程での学びの特徴を明らかにする。 分析の手法としては、従来通り、定量化できるものはエクセルなどを使って分析を進め、定性的な自由記述式のアンケート調査に関しては、SPSSによるテキストマイニングなどを用いて(平成28年度の研究費にてテキストマイニングのソフトを購入予定)、より多くの分析ができるようにつとめていく。 また、シラバス調査により、学芸員養成課程に特徴のある大学を抽出することができた。そこで、平成28年度では、実際にその大学を訪れ、担当者への聞き取り調査を行う。さらに、担当者に研究成果の一部を公開し、議論を深めることで、新たな知見や発見が得られるようにしていきたい。 平成29年度は、博物館園実習を行っている博物館園の学芸員の方に対するアンケート調査や、先駆的な博物館園実習を行っている博物館館園の実態を把握するために、現地に行って聞き取り調査を行う予定である。 以上より、博物館実習生、学芸員養成課程担当教員、博物館園実習担当学芸員それぞれの立場から、より充実した博物館学芸員養成教育に資する知見を得ることができるかと思われる。
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Causes of Carryover |
・2015年度中に行う予定だった、アンケート調査の入力作業要員を、2016年度中にまとめて行うこととしたため、人件費・謝金の支出がなかった。 ・パソコンソフト「office」の購入を予定していたが、東海大学が導入した「office365」により、大学職員が使用するofficeを無料でダウンロードでき、購入する必要がなかった。 ・当初3名で行うことを念頭に、先駆的な学芸員養成教育を行っている大学機関などへの聞き取り調査を行う予定であったが、1名出産に伴う産休の為、聞き取り調査の規模が縮小となり、その分出張旅費の使用が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①今年度から産休・育休を終えた教員が復帰することで、多くの大学機関や博物館などへの聞き取り調査のための出張旅費としての支出を多くする。②アンケート調査の入力作業要員を増やし、データ化を進めるための人件費・謝金による支出を多くする。③アンケート調査内容をデータマイニング、テキストマイニングの手法を用いて分析するため、当初予定していたソフトよりもより内容が充実したソフトを購入する。
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