2017 Fiscal Year Research-status Report
イギリス高等教育における教員養成の位置-高等教育一元化と「質保証」
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15K04320
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高野 和子 明治大学, 文学部, 専任教授 (30287883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 智子 南山大学, 人文学部, 講師 (20636550)
福島 裕敏 弘前大学, 教育学部, 教授 (40400121)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イギリス / 教員養成 / 高等教育 / PGCE / 学校主導の教員養成 / accreditation / validation / 質保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1988年教育法及び1992年継続・高等教育法によってイギリス教育が位相を変えたサッチャー・メジャー教育改革期において、一元化された高等教育全体の中で教員養成がどのような位置に置かれるようになったのかを明らかにするものである。 本研究の対象期間-Council for the Accreditation of Teacher Educationが設立された1984年から1994年法によるTeacher training Agency設立までを中心とする期間-は、学卒後課程PGCEがイギリス教員養成の主たるルートとなる時期である。また、この時期の教育行政システム整備を起点して、学校現場での養成の拡大という今日的状況が可能になった。 イギリスに言及する日本の議論において見落とされがちな点に次のものがある。 (1)PGCE課程への移行は、単なる養成パターンの変化(3ないし4年の並列型から3年+1年の積み上げ型へ)にとどまるものではない。professionalな内容にほぼ特化した養成課程となったことが、もともと伝統的に大学とは親和性の低かった教員養成が高等教育内部でいっそう周辺化される状況につながり、また、高等教育機関以外-具体的には学校現場-での養成の展開を容易にした。(2)PGCEへの移行は教職が大卒労働市場一般により統合されることにもなった。その結果、必要教員数を国内の養成課程の定員管理によって確保する手法は、教職の職業としての吸引力の問題(加えてグローバルな人材移動)もあって限界を呈し始めている。(3)教員養成の「高度化」議論でPGCEについて“修士レベルで教員養成が行われている”と紹介されることがあるが、修士レベルの単位が取得できることと修士課程であることとは区別する必要がある。PGCEは欧州高等教育圏資格枠組みでは第二サイクルの資格とはみなされていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対面での研究会は二回開催し、中等教育と中等教員養成の問題を教科の具体に即して検討するための新たな研究ネットワークも構築できたが、二回のうち一回に研究代表者が出席できなくなり、研究全体のとりまとめが十分にできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度からの翻訳を完成させるとともに、雑誌などに発表した研究成果をもとに総括的なまとめをおこなう。なお、本研究の対象期間におけるシステム整備を起点として学校現場への養成の移行が可能になったことを昨年度の報告書で述べたが、この点について、イギリスでは、“教科固有の専門性をもって主体的なカリキュラム開発・実践ができる能力が不十分なままの教師を生んでいるのではないか”との指摘が教科教育の研究者からなされたり、また、学校主導の教員養成についての本格的な実態調査研究の結果がまとまったりしてきている。それらに学ぶことによって、高等教育における教員養成の位置を明らかにするという本研究の意義をさらに明確にしたい。
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Causes of Carryover |
訪英調査を中止したため旅費・宿泊費が執行できなかった。 2018年度は最終年度となるので、最終確認のための調査と、進めてきた翻訳作業の完成のために、訪英調査を実施する予定であり、適切な執行が可能である。
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