2015 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける女性研究者を対象としたポスト・ドクトラル・フェローシップの研究
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15K04322
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授 (60153912)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国大学史 / 高等教育政策 / 女性研究者支援 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度は、全米規模の競争的フェローシップの最初のものである、ナショナル・リサーチ・フェローシップの創設過程および初期(1919年-1931年)の実際の運用過程、さらには、そこで女性研究者がどのように参入して行ったのかを分析の対象とした。その結果、以下の諸点が明らかになった。 (1)ナショナル・リサーチ・フェロー制度は、日本を含む他国でもモデルとされるに至るその重要な基本的性格を、制度創設時ではなく、むしろ実際の運用開始後に、徐々に獲得していった。 (2)この制度は、「アメリカ合衆国の科学研究体制の革新を、大学における研究の力量を向上させることによって達成する」ことであった。そのために、一方で、優れた研究能力をもつ若手人材の発見と支援が目指された。他方で、そのような人材を、それまで主流であった海外の機関へ留学あるいは在外研究をさせるのではなく、その力量がもっとも発揮できるような国内の大学に結集させ、それをもって、確固たる研究拠点(研究大学)を形成することであった。ここには、ネイティヴィズムとでも呼ぶべき理念が垣間見える。 (3)フェローの審査は、たんに応募を待つだけでなく、審査員たちの豊富な人材ネットワークを使って、適切だと判断された若手研究者たちを積極的にリクルートしていった。このことは、このようなネットワークの外部に置かれていた人々、女性研究者たちにとって不利に働くことになった。 (4)審査には、「アメリカ合衆国の科学研究体制の革新」という究極の目標との整合性のため、委員会のメンバーの職権により、たんに決められた方針を墨守して審査するのではなく、審査の公平性を著しく損なう活動や決定も含まれていた。 (5)少数の女性のフェローシップ採択者は、その圧倒的多数が、ブリンマー、バーナードなど、女性大学出身者であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおりに、20世紀に成立した全米的なフェローシップ制度の中できわめて重要な、ナショナル・リサーチ・フェローシップ制度の創設から戦後までの基本的な性格と、その中での女性研究者の問題を明らかにすることができた。ただし、ナショナル・リサーチ・フェローシップが、それ以前に成立を見ていたアメリカ女性大学人協会(AAUW)のフェローシップ制度とその運用にどのような影響をあたえたのか、という論点の解明が残された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始当初に設定された、以下の二つの課題を中心に研究を進める。 1.フェローシップ政策において、学術学会はどのような役割を果たしているのか。すなわち、①マクロ・ミクロ双方へ影響力、②学術支援ネットワークの形成、③学術学会独自のフェローシップ制度を創造、のそれぞれにおいて、学術学会はどのようにして独自の機能をはたしているのか。四つのカテゴリーのフェローシップそれぞれについて検討する。 2.21世紀型フェローシップにはどのようなものがあるのか。それはとりわけ、学術研究における普遍主義の理念に、どのような論理で改訂を加えようとしているのか。それは、女性研究者支援にどのような新たな貢献をなす可能性をもつのか。
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Causes of Carryover |
当初、購入を予定した取材用ノートPCが、メーカー機種変更のために後継機種の販売を待たねばならなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に備品として購入する。
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