2015 Fiscal Year Research-status Report
「不読」は本当か?-デジタルネイティブ世代の読書に関する実証研究-
Project/Area Number |
15K04349
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
腰越 滋 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20269343)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 読書 / デジタル・ネイティブ / 社会化 / 電子媒体書籍 / インセンティブ / 学力 / 経済資本 / 文化資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の本年度は、必要に応じて連携研究者にも相談しつつ、研究体制整備を行った。具体的には、専門性の高いアルバイトを起用した。この方は元高校教諭で、教育社会学を専攻し、司書教諭としても読書指導に携わってこられ、有力な戦力となった。 当該アルバイトを得、この方の援助により、まず読書指導に詳しい有識者を集っての研究相談会を2015年7月23日に実施した。(研究代表者、研究協力者、読書指導に関する有識者2名、アルバイトの計5名で実施)。ここでは、従前の読書調査の分析結果から出た疑問点などを提示し、研究目的に掲げた第1課題(現代の子どもの読書活動の実態把握)遂行に向けての意見聴取を行った。 研究相談会後、実査に向けての準備を進め、2015年11月から12月にかけて実査を実施した。方法としては、当初Web形式の調査を企図し、実際にこの方法で820件のdataが採取できた。だが中高生で各1,000、合計2,000のデータ採取を目標としていたため、急遽アナログ調査票での郵送法による調査も併用することとし、アルバイトや研究協力者の人脈などにも頼り、最終的には目標の3,000件を超える5,494件のdata採取に成功した。 年明けの2016年1月からはデータ入力を業者委託し、2月末には *.csv ファイル形式でのデータのデジタル化を済ませた。ただ解析ソフトへのトランスポート用のバグ除去などに思いのほか時間コストを要し、2015(平成27)年度末段階で、集計作業にかける直前段階にいるという進捗状況となった。 2016(平成28)年度には早々に集計を終え、第1研究課題であるデジタル・ネイティブ世代の読書実相を詳らかにする。続いて集計から解析に入り、第2研究課題である読者の多寡を決定する条件の特定に向けて分析を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は平成27(2015)年度中に単純集計を終えるつもりであったが、エクセルから解析ソフト(SPSS)へのデータトランスポート過程において、予期しないバグが発生し、これへの対処で苦慮している。具体的には起床時間と就寝時間を入力状況の通りエクセルに入れてもらったデジタルファイルを、SPSSにトランスポートすると、6時半(6.5)が0.2703333、7時半(7.5)が0.315 となるが、当初これに気付かず、修正を図っている。 また学内業務などに時間を取られ、研究に割ける時間が思いの外少ないことも災いした。したがって、平成28年度からの2年度間は、可能な限りの研究時間確保に注力するつもりである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目の平成28(2016)年度は、研究課題2(読者の多寡を決定する条件の特定)には何としても入っていきたい。方法としては、構造方程式モデリング(SEM)を援用して、今どきの中高生の読書を妨げる要因・促進する条件などを解明していく。 とはいえ、まずは基本統計を含む単純集計結果報告を調査対象校に配付することも大切である。これに関しては平成28年度7月末までには完了したい。 続いて、秋口から年度末にかけては、第3研究課題である「読書が子どもの社会化に及ぼす影響」について考究していく。これに関しては、より精緻な分析(エラボレーション)が求められるが、先行研究としてはNIYE(国立青少年教育振興機構)による読書調査が参考になる。幸いにも同調査のデータをお借りしての再分析が可能な状態のため、NIYE調査dataと、本科研での採取dataの異同の比較などから、意欲が読書数・学力などに及ぼす影響などについても考えてみたい。 因みに、筆者が過去に分析で関与した「第58回学校読書調査」の分析からは、SEMにより「読書にまつわる経験」→「向読書行動」→「読書数」に向けての因果が確認されえた。だが、「第59回学校読書調査」の分析結果からは、「意欲」から「読書数」へは負の係数のパスが伸びており、この部分が謎のままである。このマイナスパス係数値の謎についても、本科研採取dataで確認し、解明を試みたい。
|
Causes of Carryover |
研究初年度は研究体制作りから着手し、アルバイトの導入をまず行ったが、勤務時間が少ないため、謝金が予定額より下回った。また何よりも重視した実査であったが、Web調査で思うようなサンプル数が得られず、急遽アナログ調査票による郵送調査も併行実施することにしたため、これへの時間コストで、予定していた研究相談を含む出張が実施できず、次年度送りとなった。 さらに、解析ソフトのヴァージョンアップや機材導入なども次年度に回すことにしたため、当初の初年度使用予算額を下回ることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究二年度目の2016(平成28)年度は、解析ソフトのヴァージョンアップ、機材導入(PCと多機能型プリンタ)、研究相談のための旅費など、精力的に活動を行う予定である。特に採取データの集計結果を、まず第一報として調査対象校にお送りすることに時間と予算を投入していきたい。続いて本格的な解析に入り、SEM(構造方程式モデリング)を実行するところまで進み、場合によってはコンサルティング費を投入する。 さらに、比較のためにNIYE(国立青少年教育振興機構)による読書調査データも再分析し、これとの比較から新たな知見を導きたい。
|