2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04359
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 渉 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (00403311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公教育費 / 公共性 / 格差 / 不平等 / SSM(社会階層と社会移動に関する全国調査) / 教育の選択 / 教育の効果 / 税負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、教育に関する公共的機能の意識形成のベースとなる社会階層、社会構造、教育選択に関する分析を中心に、一般社会への研究成果の発信も含めて公表してきた。また研究課題に関する最新の情報を獲得すべく、3月には国際学会に出席し、資料も収集した。 具体的には、日本人は教育を重視してはいるが、その重視というのはあくまで個人ベースであって、公共的意義というベースに立ったものではないこと、それゆえ「教育について責任を取るべきだ」といえば何となく賛成する人が多いものの、費用が絡んできた場合には優先順位が下がること、特に高等教育に対する不信感が根強く、公的に教育機会の平等をはかるという意識が欠けること、という問題がある。そういった問題点がなぜ生じるのかを、過去の社会調査データ(SSM調査など)や文部科学省の集計データなどを用いて分析し、論文化したり、海外で学会発表したりした。 また学校の果たす進路選択の役割、学校と保護者との関係性も、そうした教育における公共的意識形成に関与すると考えられ、従来から行ってきた計量的分析をまとめ、編著書として公刊した。 一般論として言えることは、確かに教育の不平等は存在するが、一方で長期的視点に立てば、教育拡大は社会の平等化に一定程度寄与しており、また機会の平等化も進んでいる。ただし近年の急速な格差の拡大、特に子育て世代の貧困層の増加は、そうした動きを止め兼ねない。そうした格差を放置しておくことは、特に下層出身者にとっては社会から排除されたと意識されることになり、社会の分断化、ひいては民主主義社会における参加の理念を取り崩すもととなるかもしれない。このことは中・上層階層にとっても決して他人事ではない。純粋な研究活動だけではなく、そういった内容を比較的多くの人が手に取るであろう媒体に発表することで、成果の一般社会への還元にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を複数まとめて公表している。また資料収集も予定通り行っている。次の研究成果の公表に向けての準備も、特に問題なく進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究方針を変更する必要性はないので、今年度も昨年度の成果を踏まえて研究を進めていく。 具体的には、海外での学会発表を2回こなすことと、その成果の一部を論文化すること、本研究課題に関連する書籍の話を出版社と進めているので、その原稿をできるだけ今年度中にまとめて来年度には公刊できるようにすることである。引き続きそれに関連する分析や資料収集を進め、今年度後半には執筆にとりかかりたい。
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Research Products
(8 results)