2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K04359
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中澤 渉 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (00403311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不平等 / 格差 / 教育データ / 外的妥当性 / 教育意識 / ISSP / 公教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主としてSSM調査やInternational Social Survey Programme (ISSP)のSocial Inequality module data(調査年度2009年)のデータを分析し、一部については編著本を構成するチャプターとして刊行されているほか、既に原稿を提出し、刊行待ちとなっているものがある。それ以外には、主に学会発表など、分析結果の公表を行い、サジェスチョンを得るように努めた。 その中で明らかにしたのは、まず教育に関する計量的データの取り扱いであり、エビデンス・ベースドの教育政策という風潮が強まる中で、その流れ自体は好ましいと考えるが、データの性質や人間世界という歴史や文化を背景にもち、かつ自ら考えて行動する人間の特性を考慮すれば、安易に自然科学の適用をすればそれで済むのではなく、分析結果の外的妥当性などを常に考慮しなければならないこと、また多用される回帰分析についても、2つの対照的な社会観によって全く異なる方向に解釈できる可能性があること、統計的分析自体はニュートラルに感じられても、それは分析者の価値観や考え方と独立ではなく、そうした問題を自覚しておく必要があることなどを述べた。 以上を踏まえて、日本の国公立大学が、高等教育進学機会の平等化に一定の寄与をした可能性があること、しかしそうした不平等の認知には、高階層出身者は必ずしも敏感ではないこと、教育費投資の多い国では、金持ちだけが大学に行けるという意識に対して否定的な態度を持つ傾向があること、などを明らかにした。つまり日本の不平等や格差の問題と、グローバルな視点から見た格差と意識の関係を明らかにすることができた。 さらに過去の研究成果を国際的に広く周知するため、大阪大学出版会より『なぜ日本の公教育費は少ないのか』(勁草書房・2014)の英訳を出版できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では2回の海外学会発表の旅費を見込んでいたが、うち1回については、日本学術振興会の日独先端科学シンポジウムに参加する機会を得て、そこで研究報告をすることができ(旅費は日本学術振興会)、その分、多く資料や英文校正に回すことが可能となった。英語のネイティブチェックを受けて、これから出版される本や、投稿、2017年4月にアメリカで行われる学会の準備に充てることが可能となり、順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
英語論文の推敲、投稿を行うこと、また本課題に関連する海外学会の発表は既に夏にアメリカで行われる予定である(原稿はアクセプトされている)。 また最終年度に当たって、日本語での成果(中公新書)の執筆も進めている。今年度のできるだけ早い時期に原稿を提出して、公刊したいと考えている。
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