2017 Fiscal Year Research-status Report
EUにおける中等教育段階の早期離学に関する比較研究
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15K04361
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
柿内 真紀 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (70324994)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | EU / 早期離学 / 中等教育 / 比較教育 / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
EU(欧州連合)の新経済成長戦略である「欧州2020」の5つのヘッドライン指標に教育分野の「(中等教育)早期離学者比率の引き下げ」が含まれていることへの注目が本研究のスタート地点である。本年度はまず,昨年度に引き続き最新のモニタリング報告書等から基本的なデータほかを用いて,2004年以降のEU新規加盟国(いわゆるEU10諸国)に注目して比較考察をおこなった。比較考察では,EU10諸国を早期離学のモニタリングのデータ(2004年加盟以降分)を基に,顕著に離学率の高い1国とそれ以外の2グループ(中間,低率)に分け,後者の2グループからは近年上昇傾向にある国を選び,早期離学の背景について先行研究を含めて考察した。考察結果を簡潔に示せば,早期離学の救済的措置の不十分さ,地方での施設・設備に係る経済的な問題や質の高いスタッフ不足,都市部と地方の間などの国内地域間格差,ロマの子どもたちの離学率の高さなどが主な背景要因として見られた。特にロマの子どもたちの離学率の高さについては比較考察したすべての国に共通した早期離学の背景要因であったが,ロマの問題だけに焦点化されることには注意を払い,ロマの問題に左右されない早期離学要因をすくい取る必要があることを今後の課題のひとつとした。また,フランスについては連携研究者とのやりとりにより,早期離学の現状についての研究調査動向および先行研究を得ることができた。以上の得られた成果をもとに,現地調査等によるさらなる分析や,中等教育段階における早期離学に関わるネットワークやルート保障等の考察,イギリスおよびフランスを含めた比較考察が残された課題となった。 上記の研究実施においては,連携研究者との研究打ち合わせ,関連する先行研究や資料等の文献収集を並行しておこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から継続して取り組んできた,EUのモニタリング報告書等による早期離学に関する背景分析について今年度はEU新規加盟国のうちいわゆるEU10諸国を比較考察することによって,本研究の比較対象とする第3国を改めて選定する作業ができ,成果として雑誌論文にまとめることができた。また,連携研究者とのやりとりにより,フランスの先行研究について中等教育および早期離学に係わる教育と社会問題等の把握ができ,今後の比較考察の軸を得ることができた。さらに,イギリス(スコットランド)の早期離学に係るデータおよび過去の調査結果についての考察・分析を進めるなど,現地調査の準備は進んだが,一方で,現地でのレビューや調査等が年度内に実施できなかったことから,研究全体の進展にやや遅れが生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究および関連資料の収集・考察,早期離学のモニタリング報告書等のデータ分析の継続とともに,これまでの考察結果をもとにした現地調査によるさらなる分析をまずは実施する。そのうえで,比較考察をおこない,中等教育段階の早期離学の背景,および,早期離学者に関わる制度的ネットワーク形成とそのメカニズムを明らかにすることを試みる。そして,研究総括段階のひとつとして早期離学対策からみた中等教育の社会的意味の考察につなげていくことをめざして,以上の研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた海外現地調査等の設定が調整中のため,次年度へと計画変更したことにより旅費の使用が少なかった点が主な理由である。
(使用計画)次年度に移行させた海外現地調査等の実施,また,学会への参加,連携研究者(研究協力者)との研究打ち合わせ等も継続して実施予定である。加えて,先行研究および関連資料の継続収集費,資料整理費,必要となる物品費,2016年からの所属機関の電子ジャーナル購読中止によって計画当初の予想外に発生すると思われる外国雑誌の収集費等にも充てる予定である。
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