2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04368
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
東野 充成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90389809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ひとり親世帯 / 児童扶養手当 / 福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ひとり親世帯に関する給付政策がどのような展開をたどったのかを跡付けるとともに、ひとり親世帯に対して支給される児童扶養当てをめぐる2件の裁判の分析を行った。その結果、ひとり親世帯に対する給付政策は、ひとり親世帯を分断する形で展開されてきたこと、当該裁判によって認知の有無によるひとり親世帯の分断策は回避されたが、逆に近年のひとり親世帯に対する政策は、「就労意思の有無」というバイアスによってひとり親世帯を分断する傾向にあることなどが明らかとなった。 もちろん、ひとり親世帯に対する給付政策が充実することは望ましいことであるが、同時に給付政策の充実がもたらす逆説的な影響も見出すことができた。それは、ひとり親世帯に対するスティグマ化をもたらすというものである。現代日本のひとり親世帯の親は、そのほとんどが働いて生計を立てている。にもかかわらず、給付政策を充実させると、「自立していない弱者」という烙印をひとり親世帯に押すことになる。2002年の児童扶養手当法改正審議では、この点が如実に見られた。スティグマ化を回避しながら、ひとり親世帯に対する給付政策をどう充実させるのかが、今後の課題として提示できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成27年度に児童扶養手当の歴史と裁判の分析を行い、平成28年度に生活保護母子加算の歴史と裁判の分析を行い、平成29年度に総括を行う予定としていた。【研究実績の概要】で述べたように、平成27年度は児童扶養手当の歴史と裁判の分析、またそこから見いだされるひとり親世帯に対する政策上の課題を提起することができた。以上より、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、生活保護母子加算の歴史と裁判の分析を行い、そこから見いだされるひとり親世帯や貧困の問題に関する社会政策上の課題を提示する予定である。 平成29年度には、平成27年度・平成28年度に行った分析を総括し、報告書を刊行する予定である。 この間、研究がまとまり次第、学会発表および論文発表を随時行っていく。
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