2016 Fiscal Year Research-status Report
米国の高等教育機関におけるラティーノ学生受入れのための制度的・教育的支援策
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15K04382
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
牛田 千鶴 南山大学, 外国語学部, 教授 (40319413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラティーノ / 移民 / 学生支援 / 高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年の8月の現地調査では、カリフォルニア州南部に位置するHispanic Serving Institutions(在学生の25%以上がラティーノである高等教育機関/以下、HSIと略記)を中心に訪問し、ラティーノ・コミュニティに対する進学サポート、奨学金申請や在学中の勉学支援に至るまでの、多面的な制度的・教育的支援策に関する資料収集および聞き取り調査を行なった。主な訪問先は、ロサンゼルス市東部に位置する全米屈指のラテンアメリカ系移民集住地区にあるイーストロサンゼルス・コミュニティカレッジ、カリフォルニア州立大学サンベルナルディーノ校、メキシコとの国境の町(カレクシコ)にあるサンディエゴ州立大学インペリアルバレー校、インペリアルバレー・カレッジ、インペリアルバレー郡教育局等である。数値的な成果を示す資料については、十分に収集できたとは言い難いが、様々なプログラムの概要に加え、現場で奮闘する担当者の苦労や現実的課題について、多くの情報を得ることができた。 2017年1月には、研究成果の一部として「米国高等教育におけるラティーノ学生への多面的支援」と題する論文をまとめ、『アカデミア』(南山大学紀要)にて公開した。 2017年3月の現地調査では、在学生の過半数をラティーノ学生が占める、米国南部の代表的HSI高等教育機関3校―テキサス大学エルパソ校、エルパソ・コミュニティカレッジ、ニューメキシコ大学―を訪問した。高大接続をより円滑に進めるための大学側からの進学支援やコミュニティへ出向いての説明会の開催、コミュニティカレッジから4年制大学への編入支援、入学後の勉学支援やメンタリング、各種奨学金申請支援、エスニック・アイデンティティの肯定的保持のための居場所づくり等、いずれの調査対象校においても、実に多様な取り組みがキャンパス内外で展開されていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査や物品購入等、申請調書に記した計画通り、年度を通じ概ね順調に研究を遂行することができた。上記「研究実績の概要」欄で報告した成果に加え、2016年11月には、米国ラテンアメリカ学会(Latin American Studies Association)年次総会(2017年4月28日~5月1日開催)での発表申請をし受理されたため、年度末までに論文を執筆して事務局に提出した。 カトリック大学における取組に関しては、当初期待していたほどの興味深いプログラムになかなか巡り合えず、具体的な訪問や聞き取り調査には至っていない点が心残りではあるが、コミュニティカレッジをはじめとする数多くのHSIにおいては極めて充実した調査を展開することができ、研究計画の順調な遂行につながった。 2016年8月ならびに2017年3月の現地調査は、それぞれ約一週間ずつという短い調査期間ではあったが、ラティーノ人口がマジョリティと化している地域におけるコミュニティカレッジのブリッジ機能の重要性について再認識するとともに、ラティーノ・コミュニティ内にある高校とコミュニティカレッジの連携強化の動向についても新たな情報を得ることができ、大変貴重な訪問となった。とりわけニューメキシコ大学での聞き取り調査は、今後の新たな研究課題の設定につながる、実り多いものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年4月27日~5月1日にペルーカトリック大学を会場として開催された米国ラテンアメリカ学会(Latin American Studies Association)において、The Challenges of Accelerating Latino Student Success at “Hispanic-Serving Institutions”in Southern California と題する報告を行い、2016年度に実施した現地調査の研究成果を公表した。今後はこのときの議論を踏まえて加筆修正した論文を、海外ジャーナルに投稿するなどして公刊に結び付けたいと考えている。 2017年度は本研究課題の最終年度となるが、8月にはフロリダ州のマイアミデイド・カレッジやバレンシア・カレッジなどを訪問し、引き続き聞き取り調査と現地での資料収集を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
米国ラテンアメリカ学会(Latin American Studies Association)年次総会での発表申請が2016年11月に受理されたことにより、2017年4月27日から5月4日までの出張(開催地:ペルー共和国リマ市)を研究計画に追加する必要が生じたため、2016年度予算から未使用額の一部を次年度に繰り越すことで、最終年度の当初からの研究計画にできるだけ支障が及ばないよう調整した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国ラテンアメリカ学会(Latin American Studies Association)年次総会での研究成果発表出張費の一部とする。
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