2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04385
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Research Institution | Poole Gakuin University |
Principal Investigator |
中島 智子 プール学院大学, 国際文化学部, 名誉教授 (80227793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 朝鮮学校 / 学校統廃合 / 履歴データ / 小規模校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、朝鮮学校の統廃合過程を解明し小規模校の存続戦略と課題を明らかにすることである。今年度はまず、全国朝鮮学校の統合履歴データの収集と整理をおこなった。すでに収集済みの文献や資料等から都道府県毎の情報を整理し、研究協力者からの情報提供も受けて、エクセルで年表作成を始めた。しかし、大阪府は別として各都道府県毎にまとまった資料はなく、各資料の情報を付き合わせて年表作成を始めると、名称やデータの不一致等から正確な履歴データ作成はかなり困難であることが判明した。そこで、まず福岡県内の朝鮮学校の新設・移転・統合の履歴を関係者に確認しつつ完成させた。 次に、学校訪問としては、京都初級(2回)・京都第二初級・京都中高級・滋賀初級(2回)・山口初中級・北陸初中級に対しておこなった。京都に関しては申請者の地元でもあり、市内に3校あった初級学校のうち2校が2012年に統合し、残る1校は存続していることから対象とした。また、滋賀の学校は2004年に中級部が京都に統合しており、京滋という範囲で見る必要があった。校長等関係者に経緯を聞くとともに、元卒業生や元教員の聞き取りもおこなった。一方地方の学校として、県内唯一となった山口朝鮮初中級学校と北陸3県の学校でありながら生徒が数人という北陸の学校を訪問して、沿革や統合の経緯、現状と今後の課題について聞き取った。いずれの学校も厳しい状況ながら、地域の同胞コミュニティや日本人による強力な支援の輪が存在することがわかった。 他に、兵庫県内の学校沿革について元教員に、兵庫県内の公立分校について元生徒の方の話を聞き、貴重な資料提供も受けた。全校種一体型に統合された広島の学校に関しても関係者からの聞き取りを行った。 以上の作業から、これまでは各学校の沿革はわかっていても自治体毎の全体像が把握されていず、この研究の意義があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、1.全国朝鮮学校の統合履歴データの収集の整理、2.統廃合過程事例調査対象校の選定と調査準備、3.統合校類型の仮説析出と調査対象校の選定、4.小規模校の調査対象校の選定と調査準備、であった。このうち、1.については、データ収集や履歴データの整理方法について試行錯誤の結果、ようやく今後の作業方法が定まった。 2.については、京滋の学校についてはすでに準備段階から本調査に入っている。西日本の学校としては、広島の学校について関係者の協力が得られることになっている。しかし、東日本の学校の選定については今年度動くことができていない。 3.については、統廃合がどのような規模と校種間で行われ、統合校がどのような校種として成立したのかについて1.のデータを元に分析することであるが、福岡県の場合について仮説を導くことはできた。ただし、使用できる情報が少ないという課題も判明した。 4.については、予備調査として学校訪問を行い、1校は確定、しかし地方の学校で学校側の諸事情から断念したケースもある。 以上のように、概ね調査は順調に進んだが、学校統廃合という複雑で関係者にとっては胸の痛む出来事を調査することはスムーズにいかないことも当然であり、また資料的な制約があることも判明した。しかし、こうしたことは当初から織り込み済みであり、その経緯も含めて研究対象と考えるとこの調査の意義が再確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要と現在までの進捗状況について述べたように、試行錯誤を伴いつつも関係者の協力を得ることができて、一応当初の予定の方向で進んでいる。よって、今後の研究推進についてもこの方向で進めていく予定である。 全国朝鮮学校の統合履歴データの収集の整理については、福岡県の作業を例として、他の都道府県毎の作業を研究協力者とともに進めていく。その際、成果物としては図の作成を目標とする。統廃合過程の事例調査については、京滋での調査を進めていく。また、広島朝鮮学校は、統廃合過程だけでなく、統合校類型の一つのモデルとして全校種一体型である点に注目しつつ本調査に入りたい。また、名古屋初級学校を中心に愛知県の学校調査計画もすでに進んでいる。小規模校存続の事例としては、特に東日本の学校調査の準備として、まず東日本の小規模朝鮮学校が集って3日間ともに教育活動をおこなうセッピョル学園の調査(6月)を行う。そこで得られた情報をもとに具体的な調査校の選定を行い調査を実施する予定である。 ただし、すでに述べたように関係者にとっても微妙なテーマであり、また昨今の朝鮮学校を取り巻く状況が一層悪化していることから、調査対象校や関係者の迷惑になるような調査は慎まなければならないことも想定される。調査校や関係者との信頼関係を第一とし、それによって調査の変更も伴うこともあると考えられる。
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Causes of Carryover |
理由は2点ある。一つは、申請者の家族に支援が必要な状況が生じたため、研究を行えない期間が延べ2ヶ月ほど生じたからである。 もう一つは、当初予定していた文献購入や複写、そのための謝金という支出が当初予想よりかなり下回ったからで、それは、調査の結果、利用できる文献や資料がほとんどないことが判明したためである。その代わり、研究協力者から貴重な情報提供があったが、無償提供していただいたため、支出がほとんど生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全国の朝鮮学校の新設・移転・統合履歴を作成するには、既存の文献や資料がほとんど利用できず、個別に学校を訪問して関係者から聞き取りをするしかないことが判明した。したがって、次年度は、一調査対象地域や学校あたりの訪問頻度が当初予想より増す必要がある。また、申請者の家庭事情で東日本の調査を十分行えなかった分も含めて次年度は東日本地域の調査頻度が増える。こうしたことから、今年度の未支出分は、次年度の旅費や謝礼の支出に上乗せて使用する計画である。
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Research Products
(1 results)