2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04394
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
花輪 大輔 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70633155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 積極的記号化 / 消極的記号化 / カワイイ文化 / 叙述生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における先行研究とした高田(1989)の研究結果(対象児童:周南市710名)と,本研究(2016)の調査結果(対象:北海道教育大学附属小学校1600名)の「立っている人」の描画傾向について比較・考察をした。 ここでは先行研究の傾向との差異が顕著なものを抜粋して報告する。高田は「腕の表し方」を,①腕がなく手のみ,②胴を腕から離して表す,③胴を腕に密着させて表す,の3つに分類した。 1987年の6年生は腕を胴から離して描いた児童は1/3程度まで減少傾向が見られたが, 2/3の児童が胴と腕を密着させて描かないことが明らかとなった。2016年では減少傾向であるが,1987年当時の3~5年生と同程度の割合であり,有意差も確認された(p<0.01)。脚部・足部の表現でも,有意差の確認には至らなかったが,脚部が直立してどこにも接しない傾向が見多く見られたことから,いわゆるシンボリックな様式が根強く残っていることが明らかとなった。 しかし,先行研究の評定の尺度や分類だけでは対応できないケースも多く,執筆者(高田)への聞き取り調査を実施したところ,1987年当時には見られなかった表現が多数出現していることが分かった。内股に描かれる女の子(図2:カワイイ文化)や,極端な記号化が多数見られた。また,バックショットなどの増加を含めて,ただ単に「立っている人」ではなく,何らかの叙述性を含んだ表現が増加していることが明らかになった。 しかし,「積極的記号化」と「消極的記号化」との区別や,形の意味と叙述的表現の有無,質問紙の開発,「立っている人」以外の調査分析の遅延など,課題は山積している。研究の目的達成に向けて一歩ずつ,着実に取り組んでいきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画において,先行研究の評定尺度を用いて1987実施の調査結果と本研究の調査結果を比較・検討することとし,そのための予備調査を本学附属学校で実施後,全国調査を実施する予定としていた。しかし,予備調査の結果,先行研究の尺度を用いるのが困難なことが明らかとなった。そのため,北海道における予備調査の追加調査を実施し,独自の評定尺度を作成中である。そのため,2016年度中に実施予定としていた全国調査が実施できていない状況にある。今年度中の全国調査の実施を急ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で明らかになっていることについては,第32回実践美術教育学会岡山大会 ,第39回美術科教育学会静岡大会で報告しているところである。今後は,前項調査の実施・分析・検討を重ね,論文の執筆とともに,第56回大学美術教育学会等での発表を予定している。
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Causes of Carryover |
予備調査の段階で先行研究の評定尺度使用が困難との問題が生じたため,予備調査の追加調査を実施した。当初の研究計画では,量的研究を実施する予定であったが,質的な研究に移行する必要性が生じた。そこで,当初使用する予定だった謝金・旅費をテキストマイニングのソフトや多変量解析ソフト等の購入に変更したため,未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料整理の人件費として使用を予定している。
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Research Products
(3 results)