2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04394
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
花輪 大輔 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70633155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 積極的記号化 / 消極的記号化 / カワイイ文化 / 児童画の叙述性 / 描画の発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における先行研究とした高田(1989)の研究結果(対象児童:周南市710名)と,本研究(2016)の調査結果(対象:北海道教 育大学附属小学校1600名)の「立っている人」の描画傾向について比較・考察を重ねるとともに,記号化についての追跡調査を実施し,現職教員からのヒアリングを実施した。 追加調査については,先行研究との比較より「積極的記号化」と「消極的記号化」との区別や,形の意味と叙述的表現の有無を明らかにする必要性が生じたため,質問紙を開発し,調査に着手した結果,以下の事項が明らかにすることができた。 1.高学年の半数以上が,人物の絵に漫画やアニメ,ゲームの影響を受けていないと自覚しているものの,消極的記号化が散見される。 2.人物の絵が好きな児童は,積極的な記号化を好む傾向が見られた。(3年女子の肯定群に相関) 3.人物画に消極的な児童には,漫画をまねすること自体のハードルが高いという傾向が強く見られた。(5年男子の否定群に相関) 4.記号化の熟練度が関係する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究による予備調査結果を先行研究の評定尺度で分析を試みた。当時の子どもの描画との比較から一定程度の描画発達の遅延が認められた。しかし,当時の描画の大半に叙述性が見られないのに対して,本調査の3/4以上の描画に何らかの叙述性を見いだすことができた。このことは,この30年間の我が国の図画工作科教育の大きな成果と考えることができる。認識を深めるための描画,或いは作品主義的なものではなく,個人の発想・構想を子どもの表現の根幹においた教育政策の転換がもたらした成果と捉えることができる。以上のことから,子どもの描画は,表したいと思うことと分離して考えることが難しいという結論に至った。 そのため,表現の主題と描画とを対で捉える必要性が生じたため,描画の傾向を追うとした本研究の軌道修正を行う必要性が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で明らかになっていることについては,第32回実践美術教育学会岡山大会 ,第39回美術科教育学会静岡大会, 第40回美術科教育学会滋賀大会で報告しているところである。今後は,前項調査の実施・分析・検討を重ね,論文の執筆とともに,第57回大学美術教育学会及び第41回美術科教育学会札幌大会での発表を予定している 。 研究の目的達成に向けて一歩ずつ,着実に取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
研究の遅延により,全国調査が未実施であるため。
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Research Products
(1 results)